監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
治療を続けてきたけれど、首の痛みや手のしびれがなかなか取れない。医師から「これ以上はよくならないかもしれない」と言われた。そんなときに検討したいのが、後遺障害の認定の申請です。
後遺障害の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や、将来の収入の減少に対する賠償(逸失利益)を請求できるようになり、受け取れる賠償金が大きく変わります。認定を受けられるかどうかは、申請のときに出す資料によって左右されることもあります。
この記事では、症状固定から認定までの流れ、申請の2つの方法の違い、後遺障害診断書のポイントを解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 後遺障害って、どんな状態のこと?
- 申請はいつ、どこにすればいい?
- 保険会社に任せる方法と、自分で申請する方法の違いは?
- 後遺障害診断書は、何に気をつければいい?
- 認定されると、何が変わる?
この記事でわかること
- 後遺障害と、認定されると変わること
- 認定までの流れ
- 事前認定と被害者請求の違い
- 後遺障害診断書のポイントと、申請前に準備したいこと
後遺障害とは、認定されると何が変わるか
後遺障害とは、治療を続けても完全には治らずに残ってしまった症状のうち、法律の基準にあてはまるものをいいます。後遺障害には、症状の重さに応じて1級から14級までの等級があり、自賠責保険の手続きの中で、どの等級にあたるかが認定されます。
等級が認定されると、次のような賠償を請求できるようになります。
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことによる精神的な苦痛に対する賠償
- 逸失利益:後遺障害のために、将来の収入が減ることに対する賠償
等級が1つ違うだけでも、受け取れる金額は大きく変わります。適切な等級の認定を受けることが、とても大切です。
認定までの流れ
- 医師が「症状固定」(治療を続けても改善が見込めない状態)と判断する
- 医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
- 必要書類をそろえて、自賠責保険に申請する
- 損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)で、書類をもとに調査が行われる
- 等級の認定結果が通知される
症状固定の時期は、保険会社ではなく、医師と相談して決めるものです。症状固定の前に通院をやめてしまうと、症状が残っていても認定を受けにくくなるため注意しましょう。
後遺障害の申請のご相談を受け付けています
後遺障害診断書の内容の確認や、被害者請求の手続きをお手伝いします。
申請の2つの方法
事前認定(保険会社に任せる方法)
相手方の任意保険会社に、申請の手続きを任せる方法です。後遺障害診断書を保険会社に渡せば手続きを進めてもらえるため、手間がかかりません。一方で、どのような資料が提出されたかがわかりにくく、症状を裏付ける資料を追加で出す機会がないまま審査されることもあります。
被害者請求(自分で申請する方法)
被害者自身、または依頼した弁護士が、自賠責保険に直接申請する方法です。提出する資料を自分で確認し、医師の意見書や検査の結果など、症状を裏付ける資料を追加できるため、適切な認定を目指しやすい方法です。認定された場合は、自賠責保険から保険金を先に受け取ることもできます。
保険会社に任せず、弁護士に依頼して申請を
相手方の保険会社は、賠償金を支払う側です。事前認定で保険会社に申請を任せると、症状を裏付ける資料が十分に出されないまま、審査が進んでしまうこともあります。
適切な等級の認定を受けるためには、弁護士に依頼して、被害者請求で申請することが大切です。弁護士に依頼すると、次のようなことを任せられます。
- 後遺障害診断書の内容の確認と、医師への追記のお願い
- 画像や検査の結果など、症状を裏付ける資料の収集
- 自賠責保険への被害者請求の手続き
- 結果に納得できない場合の異議申立て
- 認定された後の、慰謝料や逸失利益の示談交渉
むちうちのように、画像に異常が写りにくい症状の場合は、特に資料の出し方が結果を左右します。
POINT 後遺障害の申請は、相手方の保険会社に任せるのではなく、弁護士に依頼して、被害者請求で行うことをおすすめします。
後遺障害診断書のポイント
後遺障害の審査は、基本的に書類で行われます。その中でも特に大切なのが、医師が作成する後遺障害診断書です。
- 痛みやしびれなどの自覚症状が、具体的に書かれているか
- 検査の結果(画像の所見、神経学的な検査の結果など)が記載されているか
- 症状が今後も続く見込みであることが読み取れるか
- 日常生活や仕事への影響が伝わる内容になっているか
診断書は医師が作成するものですが、提出する前に内容を確認し、記載に不足があれば、医師に相談して追記をお願いすることもあります。
申請の前に準備したいこと
- MRIなどの画像や、検査の結果をそろえる
- 通院の記録(通院した日数や期間)を確認する
- 日常生活や仕事で困っていることを、具体的にまとめておく
- 事故の状況や車の損傷がわかる資料を確認する
認定の結果に納得できないとき
後遺障害が認められなかった場合や、想定より低い等級だった場合は、異議申立てをして、もう一度審査を求めることができます。詳しくは「後遺障害が認められなかったときの異議申立て」をご覧ください。
よくある質問
Q. 申請から結果が出るまで、どのくらいかかりますか?
事案によって異なりますが、一般に1〜2か月程度かかることが多く、追加の調査が必要な場合は、それ以上かかることもあります。
Q. 整骨院にしか通っていなくても、申請できますか?
申請はできますが、後遺障害診断書を書けるのは医師だけです。整骨院だけに通っていた場合は、認定を受けるのが難しくなることがあります。
Q. 自分で被害者請求できる?
ご自身で手続きすることもできますが、必要な書類が多く、どの資料を出すかの判断が結果を左右します。適切な認定を目指すなら、資料の準備から申請まで、弁護士に任せることをおすすめします。
まとめ
後遺障害の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになり、受け取れる賠償金が大きく変わります。
申請の方法や後遺障害診断書の内容によって結果が変わることもあるため、申請は保険会社に任せず、弁護士に依頼することをおすすめします。申請の前に、一度ご相談ください。