監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
長年専業主婦で、離婚後に働こうにも、年齢や病気で十分な収入を得る見込みがない。財産分与で受け取れる財産も少なく、離婚後の生活が成り立たない。こうした場合に、離婚後の生活を支えるための上乗せを求められる仕組みが「扶養的財産分与」です。ただ、認められるのは限られた場合で、金額も期間も限定的です。この記事では、扶養的財産分与が認められる場合と、金額・期間の目安、請求のしかたを解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 離婚後の生活費を、元配偶者に請求できる?
- 扶養的財産分与とは、どんなもの?
- どんな場合に認められる?
- いくら、いつまでもらえる?
この記事でわかること
- 財産分与の3つの要素(清算・扶養・慰謝料)
- 扶養的財産分与が認められる条件
- 金額と期間の目安
- 請求のしかたと、ほかの方法
財産分与の3つの要素
財産分与には、次の3つの要素があります。
| 清算的財産分与 | 結婚中に築いた財産を分ける。財産分与の中心で、2分の1が原則 |
|---|---|
| 扶養的財産分与 | 離婚によって生活に困る側に対して、離婚後の生活を支えるために一定の財産を分ける |
| 慰謝料的財産分与 | 離婚の原因を作った側が、財産分与の中で慰謝料の意味を含めて多く分ける |
扶養的財産分与は、清算的財産分与や慰謝料で生活が成り立たない場合に、補充的に認められるものです。
認められる条件
扶養的財産分与が認められるのは、次のような事情がそろっている場合です。
- 離婚後、受け取る側が自分の収入で生活できない事情がある(高齢、病気や障害、幼い子どもを育てている、長年の専業主婦で就職が難しいなど)
- 清算的財産分与や慰謝料だけでは、当面の生活が成り立たない
- 支払う側に、支払う余裕(収入や財産)がある
POINT 「離婚して生活が苦しくなる」というだけでは認められません。働けない具体的な事情と、支払う側の余裕の両方が必要です。
離婚後の生活に不安がある方のご相談をお受けしています
財産の状況とご自身の事情を伺い、扶養的財産分与を含めて、受け取れる金額の見通しをお伝えします。
金額と期間の目安
扶養的財産分与は、離婚後の生活が自立するまでのつなぎとして認められるもので、金額も期間も限られます。裁判例では、月数万円程度を、数か月から数年程度(1〜3年程度が多い)支払う例や、まとまった額(100万円〜数百万円程度)を一括で上乗せする例があります。
生活が自立できるまでの期間、あるいは、年金の受給が始まるまでの期間などを考慮して決められます。
請求のしかた
扶養的財産分与は、財産分与の請求の中で主張します。離婚の協議・調停で、清算的財産分与とあわせて、離婚後の生活に必要な上乗せを求めます。裁判(離婚訴訟の附帯処分)でも請求できます。
請求できるのは、離婚から5年以内(2026年3月31日以前の離婚は2年以内)です。
→ 期限については「財産分与の期限は5年に|2026年4月の改正」
ほかの方法もあわせて検討する
扶養的財産分与だけでなく、次の方法もあわせて検討すると、離婚後の生活を安定させやすくなります。
- 年金分割(厚生年金の記録を分ける。将来の年金が増える)
- 養育費(子どもがいる場合)
- 慰謝料(相手に離婚の原因がある場合)
- 離婚の解決金(話し合いで、名目を問わず上乗せしてもらう)
- 児童扶養手当などの公的な支援
よくある質問
Q. 専業主婦だったが、まだ40代。認められる?
年齢だけでは判断されません。健康状態、職歴、子どもの年齢などから、自立できるまでの期間が考慮されます。
Q. 相手に離婚の原因がある。慰謝料と両方もらえる?
慰謝料と扶養的財産分与は別のものなので、両方を主張できます。ただし、慰謝料で生活が成り立つ場合は、扶養的財産分与は認められにくくなります。
Q. 一度もらった後、生活が苦しくなったら追加で請求できる?
扶養的財産分与は離婚のときに決めるもので、原則として追加の請求はできません。
まとめ
扶養的財産分与は、離婚後に自分の収入で生活できない事情(高齢・病気・幼い子ども・長年の専業主婦など)があり、清算的財産分与や慰謝料だけでは生活が成り立たない場合に、補充的に認められます。金額は月数万円を数年程度、または一括で数百万円程度が目安で、離婚から5年以内(2026年3月31日以前の離婚は2年以内)に請求します。
離婚後の生活に不安がある方は、年金分割や解決金も含めて、ご相談ください。