監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
父が営んでいた商店を、自分は長年、ほとんど給料をもらわずに手伝ってきた。兄は都会で会社員をしていて、家業には関わっていない。遺産分割で、自分の貢献は考慮されないのだろうか。あるいは、父が借金で困っていたときに、自分が肩代わりして返した。こうした、家業への貢献や、お金の援助は、「寄与分」として、遺産分割で取り分の上乗せを求めることができる場合があります。この記事では、家業従事型と金銭出資型の寄与分が認められる条件と、計算のしかた、証拠を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 家業を手伝ってきたことは、相続で考慮される?
- 親の借金を肩代わりしたお金は、返してもらえる?
- 寄与分はいくらくらい認められる?
- 証拠として何が必要?
この記事でわかること
- 寄与分の4つの型と、この記事で扱う家業従事型・金銭出資型
- 家業従事型の寄与分が認められる条件と計算
- 金銭出資型の寄与分が認められる条件と計算
- 証拠と、相続開始から10年の期限
寄与分の4つの型
寄与分は、相続人が亡くなった方の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした場合に、その分を遺産から先に取り分として認めてもらう制度です。実務では、次の4つの型に分けて考えられています。
| 家業従事型 | 亡くなった方の事業(農業、商店、会社など)に従事して、財産の維持・増加に貢献した |
|---|---|
| 金銭等出資型 | 亡くなった方に、不動産の購入資金や借金の返済資金などを出した |
| 療養看護型 | 亡くなった方の介護をして、介護費用の支出を免れさせた |
| 扶養型 | 亡くなった方の生活費を負担して、財産の減少を防いだ |
介護(療養看護型)については、別の記事で解説しています。
家業従事型の寄与分
認められる条件
- 無償またはそれに近い(給料をもらっていない、または世間相場よりかなり低い)
- ある程度の期間、継続して従事した
- 片手間ではなく、相当の労力を注いでいた(専従性)
- その働きによって、亡くなった方の財産が維持・増加した
世間相場に近い給料をもらっていた場合や、家業の利益がすでに自分の名義の財産になっている場合は、寄与分は認められにくくなります。また、同居して生活費を出してもらっていた場合は、その分が差し引かれます。
計算のしかた
一般的には、「同じ仕事をした場合に支払われたはずの給料(相当額)×(1 − 生活費の控除割合)× 従事した年数」を基本に、事情に応じて調整した額が目安になります。もらっていた給料があれば、その分を差し引きます。
家業や金銭の援助による寄与分のご相談をお受けしています
貢献の内容と資料を伺い、寄与分として主張できる額の見通しをお伝えします。
金銭等出資型の寄与分
認められる条件
- 亡くなった方のために、不動産の購入資金、事業の資金、借金の返済資金などを出した
- 無償で(返してもらう約束なしに)出した
- それによって、亡くなった方の財産が維持・増加した(不動産が残っている、借金がなくなった、など)
計算のしかた
出した金額をもとに、相続開始時の価値に直して計算します。例えば、亡くなった方の不動産の購入資金を出した場合は、「相続開始時の不動産の価値 × 出した資金の割合」が目安です。借金の返済を肩代わりした場合は、返済した額をもとに計算します。
POINT お金を出した場合、「贈与した(返してもらわないつもりだった)」のか「貸した(返してもらうつもりだった)」のかで、扱いが変わります。貸した場合は、寄与分ではなく、亡くなった方への貸付金として、遺産から返してもらう(債務として扱う)ことになります。
証拠として必要なもの
| 家業従事型 | 従事していた期間・内容がわかる資料(確定申告書の専従者の記載、帳簿、日報、取引先とのやりとり)、もらっていた給料の額がわかる資料、家業の売上や利益の推移 |
|---|---|
| 金銭等出資型 | お金を出したことがわかる資料(通帳の出金記録、振込明細、領収書)、使い道がわかる資料(不動産の売買契約書、返済の記録)、返してもらう約束がなかったことを示す事情 |
主張のしかたと期限
寄与分は、まず相続人の間の話し合いで主張し、まとまらなければ、遺産分割の調停の中で「寄与分を定める処分」の調停を申し立てます。
相続開始から10年を過ぎると、寄与分は主張できなくなります。
よくある質問
Q. 家業を手伝ったのは自分の妻で、自分ではない
相続人の配偶者が手伝っていた場合、相続人本人の寄与として扱われることがあります。相続人でない人の貢献は、特別寄与料の制度も検討します。
Q. 親の会社で、役員として普通に給料をもらっていた
相当な給料をもらっていた場合は、無償性がないとして、寄与分は認められにくくなります。
Q. お金を出したのは20年以上前
時期の古さ自体で否定されるわけではありませんが、資料がないと認められません。相続開始から10年の期限にも注意が必要です。
まとめ
家業を無償で長く手伝った(家業従事型)、不動産の購入資金や借金の返済を出した(金銭等出資型)場合は、亡くなった方の財産の維持・増加に特別の寄与をしたとして、寄与分を主張できることがあります。給料の相当額や出した金額をもとに計算し、資料で裏付けることが必要です。
貢献の内容と資料を持って、寄与分として主張できるかをご相談ください。