監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
父が亡くなり、父が持っていた賃貸アパートの家賃が、毎月、父の口座に振り込まれ続けている。遺産分割はまだ終わっていない。この家賃は、誰のものになるのだろうか。兄が管理していて、家賃を自分の口座に入れているようだが、分けてもらえるのか。相続が始まった後の家賃収入については、遺産そのものとは別のルールがあります。この記事では、その考え方と、遺産分割での扱い、管理している相続人への請求を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 相続が始まった後の家賃は、遺産に含まれる?
- 家賃は誰が受け取る権利がある?
- 一人が家賃を管理している場合、分けてもらえる?
- 固定資産税や修繕費はどうなる?
この記事でわかること
- 相続開始後の家賃は遺産ではなく、各相続人が相続分で取得すること(最高裁の考え方)
- 遺産分割で家賃をあわせて分ける方法
- 家賃を管理している相続人への請求
- 固定資産税や管理費用の差し引き
相続開始後の家賃は遺産ではない
最高裁判所は、相続が始まってから遺産分割が終わるまでの間に生じた賃料は、遺産とは別の財産で、各相続人が相続分に応じて取得する、としています。あとで遺産分割によってそのアパートを誰かが取得しても、それまでの家賃の帰属は変わりません。
| 相続開始前の家賃(未収分を含む) | 亡くなった方の財産として、遺産に含まれる |
|---|---|
| 相続開始後〜遺産分割までの家賃 | 各相続人が相続分に応じて取得する(遺産ではない) |
| 遺産分割後の家賃 | アパートを取得した相続人のもの |
例えば、相続人が子3人で、相続開始後の家賃が合計300万円なら、各100万円ずつが、それぞれのものになります。
遺産分割であわせて分ける方法
家賃は遺産ではないので、本来は遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員が合意すれば、遺産分割の中であわせて分けることができます。実務では、不動産を取得する相続人が家賃も受け取る代わりに、ほかの相続人に代償金を多く払う、といった形で調整することがよくあります。
POINT 家賃の精算を遺産分割の中で一緒に決めるかどうかは、相続人全員の合意が必要です。合意できない場合は、家賃の分配は、遺産分割とは別に請求することになります。
賃貸不動産を含む遺産分割のご相談をお受けしています
家賃の入金の状況を伺い、請求できる額の見通しと、遺産分割での整理のしかたをお伝えします。
一人が家賃を管理している場合
相続人の一人がアパートを管理し、家賃を自分の口座で受け取っている場合、ほかの相続人は、自分の相続分に当たる家賃の支払いを求めることができます。話し合いで応じない場合は、不当利得の返還として、民事裁判で請求します。
請求のためには、家賃の額と入金の状況がわかる資料(賃貸借契約書、管理会社の明細、通帳の履歴)が必要です。管理している相続人に開示を求めるか、管理会社に確認します。
固定資産税や管理費用の差し引き
家賃を受け取る一方で、固定資産税、管理会社への委託料、修繕費、ローンの返済などの支出もあります。これらの必要経費は、家賃から差し引いて、残りを相続分で分けるのが公平です。管理している相続人は、支出の領収書を保管しておきましょう。
遺産分割を早く進める
遺産分割が長引くほど、家賃の分配をめぐる争いは複雑になります。不動産を誰が取得するか、家賃と経費をどう清算するかを、調停の中で一緒に整理するのが、最も現実的な解決です。
→ 調停の進め方は「遺産分割調停の流れ|何回で終わる?何を話す?」
よくある質問
Q. 亡くなった親と同居していた家の「家賃」も請求できる?
相続人が住んでいる場合の使用料は、第三者からの家賃とは別の問題です。同居していた相続人には、遺産分割まで無償で住む合意が推定されることが多くあります。
Q. 預金の利息や株の配当金はどうなる?
預金の利息は、預金と一体のものとして遺産分割の対象とされるのが一般的です。株式の配当金は、家賃と同じように、各相続人が相続分で取得するとする考え方が一般的です。
Q. 家賃を管理している兄が、収支を教えてくれない
相続人には、管理の状況を確認する権利があります。開示に応じない場合は、管理会社への照会や、裁判での請求を検討します。
まとめ
相続開始後から遺産分割までの家賃は、遺産ではなく、各相続人が相続分に応じて取得します。相続人全員が合意すれば遺産分割の中であわせて分けられ、合意できなければ、管理している相続人に相続分の家賃を別に請求します。固定資産税などの経費は差し引いて計算します。
賃貸不動産がある相続は、家賃の精算まで含めて早めにご相談ください。