監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
財産分与で相手に払う金額と、相手からもらう慰謝料を相殺して、差額だけやりとりしたい。養育費は何年分かをまとめて、財産分与の代わりに受け取りたい。離婚のときは、財産分与・慰謝料・養育費・婚姻費用など、いくつものお金の問題を一度に解決するため、「まとめて清算する」という発想になりがちです。ただ、それぞれの性質が違うため、まとめ方によっては、あとで不利になることがあります。この記事では、まとめて清算するときの考え方と、注意点を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 財産分与と慰謝料を相殺して、差額だけにしてもいい?
- 養育費を財産分与で先にもらうことはできる?
- 「解決金」としてまとめるとどうなる?
- あとで争いにならない合意書の書き方は?
この記事でわかること
- 財産分与・慰謝料・養育費・婚姻費用のそれぞれの性質
- 相殺や一括清算ができるもの・注意が必要なもの
- 「解決金」でまとめるときの考え方
- 合意書に書いておきたい内容
それぞれの性質の違い
| 財産分与 | 夫婦の財産の清算。離婚から5年以内に請求(2026年3月31日以前の離婚は2年以内)。原則として贈与税はかからない |
|---|---|
| 慰謝料 | 離婚の原因を作った側が払う損害賠償。離婚から3年以内に請求 |
| 養育費 | 子どもの生活費。子どもの権利であり、親の合意で放棄できない。将来にわたって毎月払うのが原則 |
| 婚姻費用 | 別居中の生活費。離婚までの分。未払い分は財産分与の中で清算できる |
相殺・一括清算ができるもの
財産分与と慰謝料は、どちらも夫婦の間の金銭の清算なので、話し合いで相殺し、差額だけをやりとりする合意をすることができます。未払いの婚姻費用も、財産分与の中で清算できます。
一方、養育費は子どもの権利なので、親の間の財産分与や慰謝料と相殺することには注意が必要です。
- 養育費を一括で受け取る形で、財産分与の代わりにすることは合意上は可能だが、将来の追加請求が難しくなる
- 「財産分与を多く渡す代わりに養育費は払わない」という合意は、子どもの権利を放棄するものとして、あとから養育費の請求が認められることがある
- 相手が養育費を払わなくなったとき、こちらが払うべき財産分与の残額と相殺することは、養育費が差押えを禁じられた債権である関係で、制限される
POINT 養育費は「毎月、子どものために」が原則です。財産分与や慰謝料とまとめて清算すると、あとで養育費が足りなくなっても追加しにくくなり、相手が払わなくなったときの回収も難しくなります。
離婚のお金の清算のご相談をお受けしています
財産分与・慰謝料・養育費の内容を整理し、あとで不利にならない清算の形をご提案します。
「解決金」でまとめる場合
話し合いでは、財産分与・慰謝料などの名目を分けずに、「解決金○○万円」としてまとめて合意することがあります。相手が慰謝料という名目を嫌がる場合などに使われる方法です。
解決金でまとめる場合は、次の点を確認しておきます。
- 解決金に、何が含まれているか(財産分与、慰謝料、未払いの婚姻費用など)を、合意書の中で明らかにする
- 養育費は解決金に含めず、別の条項で毎月の金額を決める
- 税金の扱い(財産分与の性質なら原則非課税、慰謝料も非課税だが、金額が過大だと贈与とみられることがある)
- 支払いが分割の場合は、公正証書にして、不払いのときに差押えできるようにする
合意書に書いておきたい内容
- 財産分与の対象財産と、誰が何を取得するか
- 慰謝料の有無と金額(解決金に含める場合はその旨)
- 養育費の金額・支払時期・終期(財産分与とは別の条項で)
- 未払いの婚姻費用があれば、その清算
- 年金分割の合意
- 清算条項(これ以外にお互いに請求しない)。ただし、養育費の将来の増額請求を妨げない旨を書いておく
清算条項を入れると、あとから新たな請求ができなくなります。相手の財産を十分に確認してから合意しましょう。
よくある質問
Q. 相手が「養育費は財産分与に含めたはず」と言って払わない
合意書に養育費の条項がなく、財産分与に含めたとも書かれていなければ、養育費は別に請求できます。子どもの権利なので、親の合意で放棄したとは簡単には認められません。
Q. 慰謝料を分割で受け取ることになった。途中で払われなくなったら?
公正証書や調停調書にしておけば、未払い分を差し押さえられます。分割の場合は必ず公正証書にしましょう。
Q. 財産分与でもらう家の価値と、払う慰謝料を相殺できる?
合意で相殺することは可能です。家の価値の評価と慰謝料の額を整理して、差額を決めます。
まとめ
財産分与と慰謝料、未払いの婚姻費用は、話し合いで相殺・一括清算できますが、養育費は子どもの権利なので、財産分与とまとめると、将来の追加請求や、不払い時の回収が難しくなります。解決金でまとめる場合は、何が含まれているかを明らかにし、養育費は別の条項で毎月の金額を決めておくことが大切です。
離婚のお金をまとめて清算するときは、合意書にする前に、一度ご相談ください。