監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
夫(妻)と別居して、生活費をもらえなくなった。もらえなかった数か月分も、まとめて請求できるのだろうか。別居中の生活費(婚姻費用)は、収入の多い側が少ない側に支払う義務がありますが、「いつの分から」請求できるかには、実務上の大きなルールがあります。この記事では、婚姻費用を請求できる始まりの時期と、早く動いたほうがよい理由を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 別居してからもらえなかった分も、さかのぼって請求できる?
- 婚姻費用は、いつの分から支払ってもらえる?
- 請求はどうやってすればいい?
- 相手が「払わない」と言ったらどうなる?
この記事でわかること
- 婚姻費用は「請求した時」からが基本であること
- 請求の意思を残しておく方法
- 調停・審判の流れ
- 過去の分が認められる例外的な場合
婚姻費用は「請求した時」からが基本
婚姻費用は、夫婦が別居していても、婚姻が続いている限り、収入の多い側が少ない側に支払う生活費です。ただ、家庭裁判所の実務では、婚姻費用の支払義務が生じるのは、原則として「請求した時」からとされています。
具体的には、調停を申し立てた月、または、支払いを求める内容証明郵便などが相手に届いた月からとされることがほとんどです。別居してから何もせずに過ごした期間の分は、あとからさかのぼって請求しても、認められないのが原則です。
POINT 「別居した月から」ではなく「請求した月から」です。別居したら、できるだけ早く、請求の意思を形に残しておくことが大切です。
請求の意思を残しておく方法
- 家庭裁判所に、婚姻費用分担の調停を申し立てる(最も確実)
- 内容証明郵便で、婚姻費用の支払いを求める書面を送る
- LINEやメールで、婚姻費用を請求したことが日付とともに残るようにしておく
調停の申立てが最も確実です。話し合いで解決するつもりでも、申立てだけ先にしておくと、請求した時期をはっきりさせることができます。
婚姻費用のご相談をお受けしています
別居を考えている段階からご相談いただけます。請求の意思を残す方法から、調停の申立てまでサポートします。
調停・審判の流れ
- 家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てる(相手の住所地の家庭裁判所)
- 調停で、双方の収入資料(源泉徴収票・確定申告書など)をもとに金額を話し合う
- まとまらなければ、審判に移り、裁判所が金額を決める
- 決まった金額を相手が払わなければ、給料などの差押えができる
金額は、双方の収入と子どもの人数・年齢をもとにした「算定表」が目安になります。審判や調停で決まった婚姻費用は、相手が支払わないときに、給料の差押えで回収できます。
過去の分が認められる例外
次のような事情がある場合は、請求した時より前の分が考慮されることがあります。
- 別居の直後から、相手に支払いを求めていたことが証拠で明らかな場合
- 相手が、意図的に話し合いを引き延ばしていた場合
- 離婚のときの財産分与の中で、未払いの婚姻費用を考慮する場合
ただし、これらはあくまで例外で、認められるかどうかは事案によります。
別居を考えている方へ
別居の前後は、住む場所や子どものことで手一杯になりがちですが、生活費の確保は、その後の話し合いを落ち着いて進めるための土台になります。別居を決めた段階で、婚姻費用の請求も一緒に準備しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 別居から半年、何も請求していなかった
原則として、これから請求した月からの分になります。半年分をさかのぼるのは難しいことが多いですが、相手とのやりとりの記録があれば、考慮される余地もあります。
Q. 自分が家を出た側でも請求できる?
請求できます。家を出た理由が不倫など自分の側にある場合は減額されることがありますが、子どもと一緒に別居している場合は、子どもの分は認められるのが通常です。
Q. 同居したままでも請求できる?
同居していても、生活費を渡してもらえないなどの場合は請求できます。
まとめ
婚姻費用は、別居した月からではなく、請求した月から支払義務が生じるのが原則です。調停の申立てや内容証明郵便で、請求した時期を形に残しておくことが大切です。
別居を考え始めたら、生活費の請求も含めて、早めに弁護士にご相談ください。