遺言が無効になる場合|認知症・方式の不備・偽造

監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

亡くなった親の遺言書が見つかった。けれど、そこには「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていた。親は、そのころすでに認知症が進んでいて、こんな遺言を書けたとは思えない。そもそも、本当に親が書いたものなのだろうか。遺言書の内容に納得できないとき、遺言そのものが無効になる場合があります。この記事では、遺言が無効になる主な場合と、無効を主張するときの進め方を解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 認知症の親が書いた遺言は、無効になる?
  • 家庭裁判所で検認したら、遺言は有効ということ?
  • 公正証書遺言でも、無効になることはある?
  • 遺言の無効を主張するには、どうすればいい?

この記事でわかること

  • 遺言が無効になる主な場合
  • 遺言能力(遺言を書く判断力)の考え方
  • 検認と遺言の有効性の関係
  • 無効を主張するときの手続きの流れ

遺言が無効になる主な場合

遺言は、法律で決められた方式に従って作られ、作った本人に十分な判断力があった場合に、有効になります。次のような場合は、遺言が無効になることがあります。

方式の不備自筆の遺言で、全文を自分で書いていない、日付や氏名がない、印鑑が押されていないなど
遺言能力がない遺言を作ったときに、認知症などで、遺言の内容を理解して判断する力がなかった
偽造・書き換え本人ではない人が書いた、または本人が書いたものを、ほかの人が書き換えた
だまされた・脅されただまされたり、脅されたりして、本人の意思に反して書かされた

自筆の遺言では、財産の一覧(財産目録)だけは、パソコンで作ったものや通帳のコピーでもよいことになっています(各ページへの署名と押印が必要です)。

遺言能力の考え方

遺言が無効だと争われるケースで多いのが、「遺言を作ったときに、認知症で判断力がなかった」という主張です。ただ、認知症と診断されていたからといって、すぐに遺言が無効になるわけではありません。遺言を作った当時に、その内容を理解して判断できたかどうかが、個別に判断されます。

判断の材料になるもの

  • 遺言を作ったころの、病院のカルテや診断書
  • 介護の記録や、要介護認定のときの資料(主治医の意見書など)
  • 認知症の検査(長谷川式など)の結果
  • 遺言の内容が、簡単なものか、複雑なものか
  • 遺言を作ったときの経緯(誰が付き添い、誰が準備したか)

POINT 遺言能力をめぐる争いでは、当時の医療や介護の記録がとても大切です。記録は、病院や施設に保存期間があるため、早めに取り寄せましょう。

遺言の有効性についてのご相談をお受けしています
遺言書の内容や、作られた当時の状況を伺い、無効を主張できるかどうかの見通しをお伝えします。

公正証書遺言でも無効になることはある

公証人が作る公正証書遺言は、方式の不備で無効になることはほとんどありません。ただ、公証人は医師ではないため、作ったときに本人に遺言能力がなかったとして、裁判で無効と判断されたケースもあります。

検認は、有効・無効を決める手続きではない

自筆の遺言書が見つかったときは、家庭裁判所で「検認」の手続きを受ける必要があります(法務局に預けられていた遺言書は不要です)。ただ、検認は、遺言書の状態を確認して記録する手続きで、遺言が有効かどうかを判断するものではありません。検認を受けた後でも、無効を主張することはできます。

無効を主張するときの流れ

  • 遺言書や、作られた当時の医療・介護の記録などを集める
  • ほかの相続人と、遺言の有効性について話し合う
  • 話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てる
  • 調停でもまとまらなければ、地方裁判所に「遺言無効確認訴訟」を起こす

裁判で遺言が無効と判断されれば、遺言がないものとして、相続人全員で遺産分割の話し合いをすることになります。

弁護士費用

遺言の有効性をめぐる問題は、集める資料の量や、調停・訴訟になるかどうかによって、必要な作業が大きく変わります。そのため、弁護士費用は、ご事情を伺ったうえで、別途お見積りをお出しします。ご依頼の前に、費用の見通しを必ずご説明します。

よくある質問

Q. 認知症なら必ず無効になる?

必ずではありません。認知症の程度や、遺言の内容、作ったときの状況などから、遺言の内容を理解して判断できたかどうかが判断されます。

Q. 検認したら有効ということ?

いいえ。検認は遺言書の状態を記録する手続きで、有効かどうかは判断しません。検認の後でも無効を主張できます。

Q. 筆跡が親のものと違う気がする

筆跡は、昔の手紙や書類などと見比べて確認します。必要に応じて、筆跡の鑑定を行うこともあります。

まとめ

遺言は、方式の不備や、作ったときの遺言能力の不足、偽造などがあれば、無効になることがあります。認知症だったというだけで無効になるわけではなく、当時の医療・介護の記録などをもとに判断されます。

遺言の内容や作られた経緯に納得できないときは、早めに弁護士にご相談ください。

この記事の監修

弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

社会保険労務士試験合格。官公庁での勤務を経て弁護士に。
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