監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
兄とは昔から折り合いが悪く、親の遺産の話をしたくない。あるいは、兄弟が勝手に話を進めて、「ここに判を押して」と遺産分割協議書を送ってきた。相続では、こうした兄弟間の悩みがとても多くあります。
遺産分割は、相続人全員の合意が必要です。そのため、納得できないままサインする必要はありません。また、弁護士に依頼すれば、兄弟と直接話さずに、話し合いや調停を進めることができます。この記事では、兄弟と直接話さずに遺産分割を進める方法と、一方的に進められたときの対応を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 兄弟と顔を合わせたくない
- 遺産分割協議書にサインを求められている
- 遺産の全体を教えてもらえない
- 話し合いがまとまらないときは?
- 調停には出席しないといけない?
この記事でわかること
- 兄弟と直接話さずに遺産分割を進める方法
- 遺産分割協議書にサインする前の確認ポイント
- 遺産分割調停の流れ
- 調停でもまとまらない場合の審判
弁護士に任せれば、兄弟と直接話さなくてよい
弁護士に依頼すると、弁護士があなたの代理人として、ほかの相続人とのやりとりを行います。兄弟と直接顔を合わせたり、電話で話したりする必要はなくなります。
感情的になりやすい話し合いでも、弁護士が間に入ることで、法律に沿った冷静な話し合いを進めやすくなります。また、遺産の全体がわからない場合も、弁護士が資料の開示を求めたり、調査をしたりすることができます。
遺産分割協議書にサインする前の確認ポイント
兄弟から遺産分割協議書が送られてきても、内容に納得できないうちは、サインや押印をしないようにしましょう。一度サインすると、その内容で遺産分割が成立し、後からやり直すのは困難です。
- 遺産の全体(預貯金、不動産、株式、生命保険など)が明らかにされているか
- 自分の取り分が、法定相続分と比べて大きく少なくないか
- 生前贈与(特別受益)や、介護への貢献(寄与分)が考慮されているか
- 不動産の評価額が、実際の価値に見合っているか
- 借金の負担が、一方的に押し付けられていないか
POINT 「とりあえず判を押して」「手続きに必要なだけ」と言われても、内容を確認しないまま押印するのは避けましょう。納得できないうちは、サインや押印をする前に、弁護士にご相談ください。
兄弟との遺産分割のご相談を受け付けています
ご自身で話し合わなくて済むよう、弁護士が窓口になります。
話し合いがまとまらないときは、遺産分割調停
話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
- 申立て先:原則として、相手方となる相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所
- 進め方:調停委員が間に入り、相続人それぞれの意見を聞きながら、合意を目指す
- 話し合う順番:相続人の範囲、遺産の範囲、遺産の評価、取り分(特別受益・寄与分)、分け方の順に整理されることが多い
弁護士が代理人になれば、調停の場でも、ご本人の代わりに主張や交渉を行います。電話会議やウェブ会議を利用できる場合もあり、遠方の家庭裁判所でも、出席の負担を減らせることがあります。
調停でもまとまらなければ審判
調停でも合意できない場合は、審判に移り、裁判官が、遺産の分け方を決めます。審判では、法律や証拠にもとづいて判断されるため、主張を裏付ける資料が大切になります。
よくある質問
Q. 兄弟が遺産を隠していそう
預金の取引履歴を取り寄せたり、弁護士会照会を使って口座を調べたりする方法があります。使い込みが疑われる場合は「親の預金が使い込まれていたら」もご覧ください。
Q. 放っておくとどうなる?
相続人が亡くなってさらに相続人が増えたり、不動産の登記ができずに困ったりすることがあります。なお、2024年4月から相続登記が義務になり、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記の申請をしないと、10万円以下の過料の対象になることがあります。また、相続が始まってから10年が過ぎると、特別受益や寄与分を主張できなくなるなどの影響もあります。
Q. 相続人の一人が認知症
認知症などで判断が難しい相続人がいる場合は、成年後見人を選んでもらったうえで、遺産分割を進めることになります。
まとめ
兄弟と話したくないときや、一方的に進められて困っているときは、弁護士に代理人を任せるのが一つの方法です。
遺産分割協議書にサインする前に、内容が妥当かどうか、弁護士にご相談ください。