監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
遺産の土地を、誰も取得したがらないので、売って代金を分ける(換価分割)ことになった。ところが、売却の手続きに兄が協力しなかったり、買い手がつかなかったりして、いつまでも進まない。このままだとどうなるのだろうか。換価分割には、相続人が協力して不動産会社を通じて売る「任意売却」と、裁判所が売る「競売」があります。この記事では、任意売却が進まないときに競売になる流れと、競売のデメリット、避けるための工夫を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 換価分割とは、どんな分け方?
- 相続人が売却に協力しないと、どうなる?
- 競売になると、何が困る?
- 競売を避ける方法はある?
この記事でわかること
- 換価分割の2つの方法(任意売却・競売)
- 任意売却が進まないときの審判と競売
- 競売のデメリット(価格・期間・費用)
- 競売を避けるための調停条項の工夫
換価分割の2つの方法
| 任意売却 | 相続人全員が協力して、不動産会社を通じて買い手を探し、売却代金から費用を引いた残りを相続分で分ける。市場の価格で売れる |
|---|---|
| 競売 | 家庭裁判所の審判で競売が命じられ、地方裁判所の手続きで売却される。市場より安くなることが多く、時間と費用もかかる |
相続人全員が合意できれば、任意売却が圧倒的に有利です。競売は、合意ができない場合の最後の手段です。
任意売却が進まないとき
調停で換価分割(任意売却)に合意しても、次のような理由で進まないことがあります。
- 相続人の一人が、売却の契約や登記に必要な書類への署名に協力しない
- 売却の価格(最低売却価格)で合意できない
- 買い手がなかなか見つからない
- 不動産に住んでいる相続人が退去しない
調停で合意できない場合や、合意した任意売却が進まない場合は、家庭裁判所の審判で、不動産を競売にかけて代金を分けることが命じられることがあります。
不動産の換価分割でお困りの方のご相談をお受けしています
任意売却を進めるための条件の整理から、競売になった場合の対応まで、弁護士がサポートします。
競売のデメリット
- 売却価格:市場価格の6〜7割程度になることが多く、相続人全員の取り分が減る
- 期間:競売の申立てから売却完了まで、半年から1年程度かかる
- 費用:競売の申立てには、裁判所に納める予納金(数十万円程度)が必要
- 住んでいる人:競売で落札されると、住んでいる相続人は退去を求められる
POINT 競売は、合意できなかった相続人全員が損をする結果になりがちです。「競売になったらどうなるか」を見通したうえで、任意売却の条件を話し合うことが大切です。
競売を避けるための工夫
調停で換価分割に合意するときは、任意売却が進まなくなった場合に備えて、次のような条項を入れておくと、競売を避けやすくなります。
- 売却を担当する相続人(または弁護士)を決め、ほかの相続人は売却に協力する義務を定める
- 最低売却価格を決め、一定期間(6か月など)売れなければ価格を下げることを定める
- 売却の期限を決め、期限までに売れなければ競売とすることを定める
- 不動産に住んでいる相続人の退去の時期を決める
- 売却代金から差し引く費用(仲介手数料、登記費用、測量費など)と、分配の割合を明記する
合意ができれば、弁護士が売却の窓口となって進めることで、相続人どうしの直接のやりとりを減らすこともできます。
任意売却の前にできること
不動産に住んでいる相続人や、取得を希望する相続人がいる場合は、換価分割ではなく、代償分割(取得する人がほかの相続人にお金を払う)で解決できないかも、あわせて検討します。
よくある質問
Q. 換価分割の代金は、どうやって分ける?
売却代金から、仲介手数料や登記費用などの経費を引いた残りを、相続分(または合意した割合)で分けます。
Q. 売却代金にかかる税金は?
相続人それぞれに譲渡所得税がかかることがあります。税金については税理士にご確認ください。
Q. 競売の申立ては誰がする?
審判で競売が命じられた場合、相続人の誰かが地方裁判所に競売を申し立てます。申し立てる人が予納金を納め、あとで売却代金から精算されます。
まとめ
換価分割は、相続人全員で協力して売る任意売却が原則で、合意できない場合や任意売却が進まない場合は、家庭裁判所の審判で競売になることがあります。競売は価格が市場より安く、期間と費用もかかるため、調停の条項で売却の担当者・最低価格・期限を決めておくなど、競売を避ける工夫が大切です。
換価分割が進まないときは、競売になる前にご相談ください。