通勤中・仕事中の交通事故|労災と自動車保険の使い分け

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

会社に向かう途中で、車にぶつけられた。仕事で車を運転していたら、事故にあった。通勤中や仕事中の交通事故では、相手方の自賠責保険や任意保険のほかに、労災保険も使えます。どちらを使うかによって、受け取れる金額や手続きが変わることがあります。この記事では、通勤中・仕事中の交通事故で、労災と自動車保険をどう使い分けるかを解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 通勤中の事故でも、労災は使える?
  • 労災と相手の保険、どちらを使えばいい?
  • 両方からもらうことはできる?
  • 会社が労災を使うのを嫌がる

この記事でわかること

  • 労災が使える交通事故
  • 労災と自動車保険の関係
  • 労災を使うメリット
  • 手続きと示談の前の注意点

労災が使える交通事故

次のような交通事故は、労災保険の対象になります。正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も対象です。

  • 通勤中の事故(自宅と会社の往復など、合理的な経路での移動中)
  • 仕事中の事故(営業や配達、取引先への移動中など)

事故の相手(加害者)がいる場合は、「第三者行為災害」として扱われます。なお、通勤中や仕事中のけがには、健康保険は使えません。

労災と自動車保険の関係

通勤中や仕事中の交通事故では、労災保険と、相手方の自賠責保険・任意保険の両方を使うことができます。どちらを先に使うかは、被害者が選ぶことができます。

ただし、同じ損害について、労災と相手方の保険の両方から、二重に受け取ることはできません。一方から受け取った分は、もう一方の支払いから差し引かれます。

労災を使うメリット

治療費労災の病院では、窓口での負担がない。相手方の保険会社による打ち切りを気にせず治療を受けやすい
被害者にも過失がある場合労災の給付は、過失によって減らされない
休業した場合給料の約6割の休業補償給付に加えて、約2割の休業特別支給金を受け取れる
後遺障害が残った場合労災からも、障害の等級に応じた給付を受けられる

休業特別支給金は差し引かれない

休業特別支給金(給料の約2割)は、相手方への損害賠償から差し引かれないとされています(最高裁判所の判例)。休業した場合は、労災を使うことで、相手方の保険だけを使う場合より、受け取る金額の合計が多くなることがあります。

POINT 休業がある場合や、ご自身にも過失がある場合は、労災を使ったほうが有利になることが多くあります。どちらを使うか決める前に、弁護士にご相談ください。

会社が労災を嫌がる場合

会社が、労災保険の手続きに消極的なことがあります。しかし、労災保険を使うことは、働く人の権利です。通勤中の事故は、会社が支払う労災保険料にも影響しません。会社とよく話し合い、それでも難しい場合は、労働基準監督署に相談することもできます。

通勤中・仕事中の事故のご相談をお受けしています
労災と自動車保険のどちらを使うのがよいか、事故の状況に合わせてアドバイスします。お気軽にご相談ください。

手続きと示談の前の注意点

  1. 会社に事故を報告し、労災の手続きを進めてもらう
  2. 労働基準監督署に、「第三者行為災害届」などの書類を出す
  3. 労災の指定病院で治療を受ける(労災の様式の書類を出す)

POINT 相手方の保険会社と示談をする前に、必ず労働基準監督署に連絡してください。示談の内容によっては、それ以降の労災の給付が受けられなくなることがあります。

よくある質問

Q. 健康保険は使えない?

通勤中や仕事中のけがは労災保険の対象になるため、健康保険は使えません。誤って健康保険を使った場合は、切り替えの手続きが必要です。

Q. 会社が使わせてくれない

労災を使うことは働く人の権利です。会社と話し合っても難しい場合は、労働基準監督署に相談しましょう。

Q. 公務員の場合は?

公務員の方は、労災保険ではなく、公務災害の補償制度の対象になります。考え方は、労災とほぼ同じです。

まとめ

通勤中・仕事中の交通事故では、労災保険と相手方の保険の両方を使えます。二重に受け取ることはできませんが、休業特別支給金は差し引かれないため、休業がある場合などは、労災を使ったほうが有利になることがあります。

どちらの保険を使うか迷ったら、示談の前に、弁護士にご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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