監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
交通事故のけがで仕事を休み、その分の給料が減ってしまった。自営業で、しばらく店を開けられなかった。こうした収入の減少は、「休業損害」として相手方に請求できます。
休業損害は、計算のしかたによって金額が大きく変わり、保険会社の提示が低く計算されていることもあります。この記事では、休業損害の計算のしかたと、職業ごとの考え方、請求に必要な書類を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 仕事を休んだ分の給料は請求できる?
- 有給休暇を使った日も請求できる?
- 自営業の場合はどう計算する?
- 保険会社の提示が少ない気がする
- 請求には、どんな書類が必要?
この記事でわかること
- 休業損害の計算のしかた
- 3つの基準の違い
- 職業ごとの考え方
- 請求に必要な書類
休業損害とは
休業損害とは、交通事故のけがのために仕事を休んだり、十分に働けなかったりしたことで、収入が減った分の損害です。基本的には、次のように計算します。
POINT 休業損害 = 1日あたりの基礎収入 × 休業した日数
3つの基準の違い
| 自賠責保険の基準 | 1日あたり原則6,100円(収入がそれ以上あることを証明できれば、1日1万9,000円まで) |
|---|---|
| 任意保険の基準 | 保険会社がそれぞれ定める基準 |
| 弁護士基準 | 事故の前の実際の収入をもとに計算する |
収入が多い方ほど、弁護士基準で計算し直すことで、金額が大きく変わることがあります。
休業損害のご相談を受け付けています
保険会社から提示された休業損害の金額に疑問がある場合は、お気軽にご相談ください。
職業ごとの考え方
会社員などの給与所得者
事故の前3か月の給与をもとに、1日あたりの基礎収入を計算するのが一般的です。保険会社は、3か月の給与を90日で割って計算することが多いですが、実際に働いた日数で割るべきだと主張できる場合もあります。有給休暇を使って休んだ日も、休業損害として認められます。
自営業の方
事故の前の年の確定申告の所得をもとに計算するのが一般的です。休業中も支払いが続く家賃などの固定費を、損害に含められる場合もあります。
主婦(主夫)の方
家族のために家事をしている方は、収入がなくても、家事ができなかった分を休業損害として請求できます。詳しくは「主婦(主夫)の休業損害」で解説しています。
仕事をしていない方・学生
原則として休業損害は認められませんが、就職が決まっていたのに事故で働き始めるのが遅れた場合などは、認められることもあります。
休業した日数の考え方
休業した日数は、けがのために実際に仕事を休んだ日数が基本です。入院した日や通院した日のほか、医師の指示で自宅で療養した日も含まれます。症状が軽くなった後も休み続けた場合は、その分が認められないこともあるため、休業の必要性について医師とよく相談しておきましょう。
請求に必要な書類
- 休業損害証明書(勤務先に作成してもらう)
- 事故の前の年の源泉徴収票
- 自営業の方は、確定申告書の控え
- 医師の診断書(休業が必要だったことがわかるもの)
治療が長引く場合は、示談の前に、休業損害の一部を先に支払ってもらえることもあります。
労災の休業補償との関係
通勤中や仕事中の事故で、労災保険から休業補償給付(給料の約6割)を受け取っている場合、その分は、相手方に請求する休業損害から差し引かれます。
一方で、あわせて受け取る休業特別支給金(給料の約2割)は、差し引かれません。そのため、労災を使うことで、受け取る金額の合計が多くなることがあります。
→ 詳しくは「通勤中・仕事中の交通事故|労災と自動車保険の使い分け」
よくある質問
Q. ボーナスが減ってしまいました。請求できますか?
事故による欠勤が原因で賞与が減った場合は、その分も損害として請求できる場合があります。勤務先に、賞与が減った理由を証明してもらいます。
Q. 仕事を休まずに働きましたが、請求できますか?
休まずに働いた場合は、原則として休業損害は請求できません。ただ、通院のために遅刻や早退をした場合は、その分を請求できることがあります。
Q. 提示が少ないと感じる
基礎収入の計算や休業日数の数え方によって、金額が少なくなっていることがあります。弁護士が計算を確認し、実際の収入をもとに交渉することで、増額できる場合もあります。
まとめ
休業損害は、1日あたりの基礎収入に休業した日数をかけて計算し、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わります。
有給休暇を使った日や、主婦(主夫)の方の家事ができなかった分も、休業損害として請求できます。保険会社の提示に疑問があれば、ご相談ください。