介護した分は相続で増える?|寄与分の請求

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

何年も、仕事を減らして親の介護を続けてきた。ほかの兄弟は、ほとんど顔も見せなかった。それなのに、遺産は兄弟で同じ割合で分けると言われて、納得できない。そんなご相談をよくいただきます。

亡くなった方の財産の維持や増加に、特別な貢献をした相続人は、「寄与分」として、ほかの相続人より多く遺産を受け取れる場合があります。ただ、家族として当然の範囲の介護では、寄与分は認められにくく、主張するには具体的な証拠が必要です。

この記事では、介護で寄与分が認められるための条件と、主張するためのポイントを解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 介護してきた分、多くもらえないの?
  • どのくらいの介護なら、寄与分が認められる?
  • 寄与分は、いくらくらいになる?
  • どんな証拠を残しておけばいい?
  • 長男の妻として介護してきた。何か請求できる?

この記事でわかること

  • 寄与分とは何か
  • 介護で寄与分が認められるための条件
  • 寄与分の計算の考え方と、必要な証拠
  • 相続人以外の親族が請求できる特別寄与料

寄与分とは

寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献に応じて、ほかの相続人より多く遺産を受け取れる制度です。

  • 療養看護:介護や看護をして、介護サービスなどの費用の支出を抑えた
  • 家業の手伝い:亡くなった方の事業を、無償またはわずかな報酬で手伝った
  • 金銭の援助:亡くなった方の生活費や、家の購入資金などを出した
  • 財産の管理:亡くなった方の不動産などを管理して、管理費用の支出を抑えた

介護で寄与分が認められるための条件

親子や夫婦の間には、もともとお互いに助け合う義務があります。そのため、介護をしたというだけでは寄与分は認められず、通常期待される程度を超える「特別の寄与」であることが必要です。

  • 介護が必要な状態だった(要介護認定を受けていたなど)
  • 長い期間にわたって、継続して介護をしていた
  • 仕事を辞めたり減らしたりするなど、介護に多くの時間と労力を割いていた
  • 無償、またはほとんど無償で介護をしていた
  • 介護によって、施設やヘルパーの費用などの支出を抑えられた

POINT 時々様子を見に行っていた、買い物を手伝っていた、といった程度では、寄与分は認められにくいのが実情です。

寄与分のご相談を受け付けています
介護の内容や期間を伺い、寄与分を主張できる見込みをご説明します。

寄与分の計算の考え方

介護による寄与分は、一般に、介護サービスを利用した場合の費用(介護報酬の相当額)に、介護をした日数をかけ、そこから一定の割合を差し引いて計算する考え方がとられています。家族による介護は、専門の介護職員による介護とは違うことなどが考慮されるためです。

実際の金額は、介護の内容や期間、要介護度などによって、事案ごとに判断されます。

寄与分を主張するために必要な証拠

  • 要介護認定の記録(介護保険の認定通知など)
  • 医師の診断書やカルテ
  • 介護の内容や時間を記録した日記・メモ
  • ケアプランや、介護サービスの利用記録
  • 介護のために仕事を辞めたり減らしたりしたことがわかる資料
  • 介護のために支出したお金の領収書

寄与分は、ほかの相続人に争われることが多い主張です。どのような介護を、どのくらいの期間続けてきたかを、資料で具体的に示すことが大切です。

相続人ではない親族が介護してきた場合

亡くなった方の子の配偶者(いわゆるお嫁さん)など、相続人ではない親族が介護をしてきた場合は、相続人に対して「特別寄与料」を請求できる場合があります。

特別寄与料は、相続が始まったことと相続人を知った時から6か月以内、または相続が始まってから1年以内に請求する必要があります。早めに対応しましょう。

相続開始から10年の期限(2023年4月の改正)

2023年4月1日に施行された改正民法で、相続が始まってから10年を過ぎた後の遺産分割では、寄与分を主張することができなくなりました。10年を過ぎると、原則として法定相続分(または遺言による指定相続分)で分けることになります。

例外110年が過ぎる前に、家庭裁判所に遺産分割の調停・審判を申し立てていた場合
例外210年が過ぎる前の6か月以内に、やむを得ない事由で申立てができなかった場合に、その事由がなくなってから6か月以内に申し立てた場合
改正前に始まった相続相続開始から10年、または2028年3月31日の、いずれか遅いほうまで主張できる

POINT 相続が始まってから何年もたっている場合は、寄与分を主張できる期限が迫っていることがあります。話し合いが長引いているときは、期限までに家庭裁判所に申し立てることが大切です。

よくある質問

Q. 介護の記録を残していませんでした。

今からでも、介護保険の記録や、病院の記録、家族とのやりとりなどから、介護の状況を示せることがあります。思い出せる範囲で、時系列をまとめておきましょう。

Q. 親と同居していただけでも、寄与分は認められますか?

同居していただけでは、寄与分は認められにくいとされています。同居の中で、どのような特別の貢献をしたかが問題になります。

Q. 寄与分は、遺産分割の調停で主張するのですか?

話し合いの中で主張し、まとまらない場合は、遺産分割調停の中で主張するのが一般的です。

まとめ

介護の負担が通常の範囲を超える特別なものであった場合は、寄与分として、遺産の取り分に反映できる可能性があります。

寄与分を認めてもらうには、証拠の準備が欠かせません。特別寄与料には短い期限もあるため、早めにご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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