監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
相続で兄弟と共有になった実家に、自分が住み続けたい。そのために、兄弟の持分を買い取りたい。離婚した元配偶者と共有している自宅を、元配偶者の持分を買い取って、自分のものにしたい。持分を買い取ることには相手も前向きだけれど、「いくらで買い取ればいいのか」で話が止まってしまう。共有不動産の持分の買取りでは、価格の決め方が一番もめやすいところです。この記事では、共有持分を買い取るときの価格の決め方と、話し合いの進め方、注意点を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 共有者の持分は、いくらで買い取るのが妥当?
- 不動産の価値は、何を基準に決めればいい?
- 自分が住んでいることや、払ってきた税金は価格に影響する?
- 価格で合意できないときは、どうなる?
この記事でわかること
- 持分の買取りが向いている場面
- 買取価格の決め方の基本と、不動産の価値の調べ方
- 価格を調整する要素
- 合意できないときの解決方法
持分の買取りが向いている場面
共有の状態を解消する方法には、不動産を売ってお金で分ける方法もありますが、次のような場合は、共有者の持分を買い取って、自分の単独所有にする方法が向いています。
- 自分がその家に住み続けたい、その土地を使い続けたい
- 思い出のある実家を、売らずに残したい
- ほかの共有者は、お金を受け取れれば手放してもよいと考えている
持分を買い取るには、買い取る側に、代金を用意できる見込みがあることが前提になります。住宅ローンを使うかどうかも、早めに金融機関に相談しておきましょう。
買取価格の決め方の基本
共有者どうしで持分を売り買いする場合、一般的には、「不動産全体の価値 × 持分の割合」が、価格を考える出発点になります。例えば、不動産全体の価値が3,000万円で、相手の持分が2分の1なら、1,500万円が目安です。
そのため、まずは「不動産全体の価値をいくらと見るか」を、共有者の間で合わせることが大切です。
不動産全体の価値の調べ方
| 固定資産税評価額 | 固定資産税の納税通知書でわかる。手間はかからないが、実際の取引価格より低く出ることが多い |
|---|---|
| 路線価(相続税評価額) | 国税庁が公表する土地の価格。相続のときの基準になるが、実際の取引価格より低めになりやすい |
| 不動産会社の査定 | 実際に売れる価格に近い目安がわかる。無料のことが多いが、会社によって金額に幅がある |
| 不動産鑑定 | 不動産鑑定士が評価する。費用はかかるが、根拠がはっきりしていて、裁判でも使われる |
POINT どの方法を使うかで、価格は大きく変わります。複数の不動産会社の査定を取って比べるなど、お互いが納得できる根拠をそろえることが、早い合意への近道です。
共有持分の買取りのご相談をお受けしています
適正な買取価格の見通しから、共有者との交渉、契約書の作成まで、弁護士がサポートします。お気軽にご相談ください。
価格を調整する要素
全体の価値に持分の割合をかけた金額をもとに、次のような事情を考えて、価格を調整することがあります。
- 建物が古く、修繕や建て替えが必要になる
- 住宅ローンが残っていて、その返済をどちらが引き受けるか
- これまで、固定資産税や修繕費を、どちらか一方だけが払ってきた
- 共有者の1人だけが住んで使ってきた(使っていない側から、使用料に当たる金額を求められることもある)
相続で共有になった場合
まだ遺産分割が終わっていない場合は、遺産分割の話し合いの中で、ほかの遺産とあわせて調整することもできます。不動産を取得する人が、ほかの相続人にお金を払う「代償分割」という方法です。
持分だけを第三者に売る場合との違い
共有持分は、共有者以外の第三者(持分の買取業者など)に売ることもできます。ただ、持分だけを買っても不動産を自由に使えないため、買取業者の価格は、全体の価値に持分の割合をかけた金額より、大幅に安くなるのが一般的です。
共有者どうしの買取りでは、買い取った側が不動産全体を自由に使えるようになるため、全体の価値を基準に考えるのが一般的です。相手から「業者ならこの金額」と安い価格を示された場合も、その違いを踏まえて話し合うことが大切です。
話し合いの進め方と注意点
- いきなり金額を示すのではなく、査定書などの根拠をそろえてから提案する
- 住宅ローンや固定資産税の精算など、代金以外の条件もあわせて決める
- 合意したら、売買契約書(または共有物分割の合意書)を作り、持分の移転の登記をする
- 代金の支払いと登記の時期を、同じ日に合わせるなど、トラブルを防ぐ段取りをする
税金にも注意
持分を売った側には、利益が出た場合に譲渡所得税がかかることがあります。また、相場より大幅に安い価格で買い取ると、安くなった分が贈与とみなされ、買い取った側に贈与税がかかるおそれがあります。価格を決めるときは、税理士にも相談しておくと安心です。
価格で合意できないとき
話し合いで価格が決まらない場合は、共有物分割の裁判を起こすことができます。裁判では、不動産を取得する人が、ほかの共有者に持分の価格を支払う方法(代償分割)が認められることがあり、その場合の価格は、不動産鑑定などをもとに裁判所が決めます。
→ 詳しくは「共有不動産を売りたい|反対する共有者への対処法」
弁護士費用
共有持分の買取りの問題は、不動産の価値や共有者の人数、話し合いで解決できるか裁判になるかによって、必要な作業が大きく変わります。そのため、弁護士費用は、ご事情を伺ったうえで、別途お見積りをお出しします。ご依頼の前に、費用の見通しを必ずご説明します。
よくある質問
Q. 相手が高すぎる金額を言ってくる
査定書などの根拠を示して、全体の価値に持分の割合をかけた金額を基準に話し合います。まとまらない場合は、裁判で適正な価格を決めてもらうこともできます。
Q. 住宅ローンが残っている家でも買い取れる?
買い取れます。ただし、ローンの名義や残りの返済をどうするかを、金融機関も含めて決める必要があります。
Q. 兄弟の1人が行方不明で話し合えない
所在がわからない共有者の持分を、裁判所の決定を受けて取得できる制度もあります。ご相談ください。
まとめ
共有持分を買い取るときの価格は、「不動産全体の価値 × 持分の割合」が出発点になり、全体の価値をどの方法で評価するかで大きく変わります。建物の状態やローン、これまでの税金の負担なども考えて調整し、合意できないときは、共有物分割の裁判で価格を決めてもらうこともできます。
買取価格の話し合いで迷ったら、金額を提案する前に、弁護士にご相談ください。