アスベストの労災|認定の基準と受け取れる金額、申請の流れ

監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

仕事中にアスベストを吸い込み、そのことが原因で中皮腫や肺がんなどを発症した場合は、労働災害(労災)と認められる可能性があります。退職してから何十年もたっていても、労災を申請できる場合があります。

「労災」というと、仕事中のけがのイメージが強いかもしれません。しかし、仕事で吸い込んだアスベストが原因で、何十年もたってから発症した病気も、労災の対象になります。退職後でも、会社がなくなっていても、申請できる可能性があります。

こんな疑問はありませんか?

  • アスベストの病気で、労災は認められる?
  • 退職してから何十年もたっている
  • 会社がもう倒産している
  • 労災が認められると、何が受け取れる?
  • 申請は、どこにすればいい?

この記事でわかること

  • アスベストによる病気が労災になる場合
  • 労災で受けられる給付
  • 申請の流れ

アスベストによる病気が労災になる場合

仕事でアスベストにさらされたことが原因で病気になったと認められれば、労災の対象になります。対象となる主な病気は、中皮腫、肺がん、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚です。

POINT 会社がすでに倒産している場合や、退職してから長い年月がたっている場合でも、労災を申請できることがあります。

労災で受けられる給付

療養(補償)給付治療費
休業(補償)給付仕事を休んだ間の補償
傷病(補償)年金長く治らず、病状が重い場合の年金
障害(補償)給付障害が残った場合の補償
介護(補償)給付介護を受けている場合の補償
遺族(補償)給付亡くなった場合の、ご遺族への年金や一時金
葬祭料(葬祭給付)葬儀を行った方への給付

アスベストの労災申請のご相談を受け付けています
申請の準備から、ほかの制度との使い分けまでご案内します。

申請の流れ

  1. 医師の診断書など、病気についての資料を集める
  2. アスベストにさらされる仕事をしていた事業場を管轄する労働基準監督署に申請する
  3. 労働基準監督署が、職歴や病状を調査する
  4. 労災と認められると、給付が支払われる

どこでアスベストを扱ったかがはっきりしない場合でも、労働基準監督署が調査を行います。職歴の整理のしかたは「どこでアスベストを吸ったかわからないとき」で解説しています。

労災とあわせて使える制度

建設現場で働いていた方は建設アスベスト給付金、石綿工場や、工場の中で石綿を扱う作業をしていた方は国との裁判による賠償金も、あわせて受け取れる可能性があります。

労災の申請で準備したいもの

  • 医師の診断書や、検査の結果
  • 職歴がわかる資料(年金の加入記録、給与明細など)
  • アスベストを扱った作業の内容がわかる資料や、同僚の証言
  • 亡くなった方の場合は、死亡診断書や戸籍

資料がそろわなくても、労働基準監督署が調査を行います。わかる範囲で準備しましょう。

労災が認定されると、いくら受け取れる?

労災で受け取れる金額は、「給付基礎日額」(おおむね、以前の賃金の1日あたりの平均額)をもとに計算されます。アスベストの病気のように、退職してから長い年月がたって発症した場合は、アスベストを扱う仕事をしていた当時の賃金をもとに、今の賃金の水準に合わせて調整するなど、特別なルールで計算されます。

ご本人が療養中の場合

療養(補償)給付治療費の全額
窓口での自己負担はありません
休業(補償)給付給付基礎日額の約80%(1日あたり)
働けない日の4日目から(特別支給金を含む)
傷病(補償)年金給付基礎日額の245日分〜313日分(毎年)
療養を始めて1年6か月たっても治らず、傷病等級1〜3級の場合に、休業の給付に代わって支給(このほかに特別支給金などがあります)
介護(補償)給付介護の費用に応じて毎月支給(上限あり)
一定の障害があり、介護を受けている場合

ご家族が亡くなった場合(ご遺族)

遺族(補償)年金給付基礎日額の153日分〜245日分(毎年)
生計を同じくしていたご遺族の人数に応じて(ご遺族が妻1人で、55歳以上などの場合は175日分)
遺族特別支給金300万円(一時金)
遺族特別年金年金に上乗せ
ボーナスなどの特別給与をもとに計算
遺族(補償)一時金給付基礎日額の1,000日分
年金を受け取れるご遺族がいない場合(このほかに特別支給金などがあります)
葬祭料(葬祭給付)31万5,000円+給付基礎日額の30日分
この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は60日分

POINT 労災の給付とは別に、建設アスベスト給付金や、国との裁判による賠償金を受け取れる場合もあります。実際の金額は、以前の賃金やご家族の状況によって大きく変わるため、ご相談の際に見通しをご説明します。

よくある質問

Q. 一人親方でも労災は?

労災保険に特別加入していた場合は、対象になることがあります。加入していなかった場合は、建設アスベスト給付金などを検討します。

Q. 労災と、ほかの制度は一緒に使えますか?

労災の給付と、建設アスベスト給付金や国との裁判による賠償金などは、あわせて受け取れる場合があります。

Q. 申請が認められなかったら、どうなりますか?

不服を申し立てる手続きがあります。認められなかった理由を確認して、対応を検討します。

まとめ

仕事でアスベストを吸い込んで病気になった場合は、労災と認められる可能性があります。

退職後や会社の倒産後でも申請できる場合があります。まずはご相談ください。

この記事の監修

弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

社会保険労務士試験合格。官公庁での勤務を経て弁護士に。
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