監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
事故で大切にしていた車が大きく壊れ、保険会社から「全損なので、時価額の〇〇万円でのお支払いになります」と言われた。でも、その金額では、同じような車を買い直すことができない。そんなご相談は少なくありません。
時価額は、保険会社が提示した金額で決まりというわけではありません。同じ条件の車が実際にいくらで売られているかを示すことで、見直しを求められる場合があります。
この記事では、全損と時価額の考え方、提示額が低くなりやすい理由、見直しを求めるために集めたい資料、買い替えにかかる諸費用について解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 「全損」って、どういう意味?
- 修理したいのに、修理代を払ってもらえないの?
- 提示された時価額では、同じ車が買えない
- どんな資料があれば、時価額を見直してもらえる?
- 買い替えの手続きにかかる費用も請求できる?
この記事でわかること
- 全損と時価額の考え方
- 保険会社の提示額が低くなりやすい理由
- 時価額の見直しを求めるために集めたい資料
- 買い替えにかかる諸費用の請求
「全損」と時価額の考え方
事故で車が壊れた場合、原則として修理費が賠償の対象になります。ただ、次のような場合は「全損」として扱われ、事故当時の車の時価額が、賠償の上限になるのが一般的です。
- 物理的全損:車が大きく壊れて、修理することができない
- 経済的全損:修理はできるが、修理費が車の時価額(と買い替えの諸費用の合計)を上回る
時価額とは、事故当時、その車と同じ車種・年式・型式で、同じくらいの使用状態・走行距離の車を、中古車市場で手に入れるために必要な金額と考えられています。
POINT 修理費が時価額を上回る場合、相手方から支払われるのは、原則として時価額(と買い替えの諸費用)までです。
修理費の全額は支払われません。長く乗っている車ほど時価額が低くなり、この問題が起こりやすくなります。
保険会社の提示額が低くなりやすい理由
- 業界で使われている中古車価格の資料をもとに計算していて、その価格が実際の市場の価格より低いことがある
- 人気のグレードや、付けていたオプション装備が考慮されていない
- 走行距離が少ない、整備が行き届いているなど、車の状態のよさが反映されていない
- 年式が古い車について、市場での実際の取引価格よりも低く見積もられている
保険会社の提示額が正しい場合もあります。ただ、弁護士が提示額の根拠を確認し、市場の実際の価格と比べて交渉することで、金額を増額できる場合もあります。
物損事故のご相談も受け付けています
提示された時価額が妥当か、資料をもとに一緒に確認します。弁護士費用特約があれば、物損だけの事故でもご利用いただけます。
時価額の見直しに必要な資料
- 同じ車種・年式・型式・走行距離の中古車の販売価格(中古車情報サイトの掲載例など、複数)
- 購入したときの契約書や、付けていたオプションの内容がわかる資料
- 車検証、整備の記録
- 事故の前の車の状態がわかる写真
交渉の基本は、「同じ条件の車が、実際にいくらで売られているか」を、具体的な資料で示すことです。条件のできるだけ近い車の掲載例を、いくつか集めておきましょう。
買い替えにかかる諸費用も請求できる
全損で車を買い替える場合、車の本体価格だけでなく、買い替えに必要な諸費用の一部も、損害として認められることがあります。
- 新しい車の登録や、車庫証明の手続きにかかる費用
- 納車にかかる費用
- 廃車にかかる費用
- 事故車に残っていた自動車重量税の還付されない分
保険会社の提示に、こうした費用が含まれているかを確認しましょう。
代車費用・評価損も確認
修理や買い替えまでの間に代わりの車が必要な場合は、代車費用を請求できることがあります。修理して乗り続ける場合は、車の価値が下がった分(評価損)が問題になることもあります。詳しくは「代車費用はいつまで認められる?」「評価損(格落ち)は請求できる?」をご覧ください。
よくある質問
Q. 愛着のある車なので、どうしても修理したいのですが?
修理すること自体はできますが、経済的全損の場合、相手方から支払われるのは時価額までが原則です。時価額を超える修理費は、ご自身の負担になります。ただ、相手方の自動車保険に「対物超過修理費用特約」が付いている場合は、時価額を超える修理費も、一定の金額まで支払われることがあります。ご自身の車両保険に「車両新価特約」などが付いている場合も、補償を受けられることがあります。
Q. 自分で交渉できる?
ご自身で、市場価格の資料を集めて交渉することもできます。ただ、保険会社が応じないことも多いため、難しい場合は弁護士に相談してみてください。
Q. 物損だけの事故で、弁護士に頼む意味はありますか?
弁護士費用特約があれば、費用の負担を気にせず、時価額や代車費用、評価損などの交渉を任せることができます。特約がない場合は、費用倒れにならないかを相談の際に確認します。
まとめ
全損の場合、賠償の上限は事故当時の時価額になるのが一般的ですが、保険会社の提示額が、市場の実際の価格より低いことがあります。
同じ条件の車の販売価格などの資料をそろえて、見直しを求めることができます。物損だけの事故でも、弁護士費用特約があれば、お気軽にご相談ください。