財産開示の前に|相手に知られず口座を探す

監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

判決を取ったのに、相手は支払ってくれない。相手の財産がわからないので、まずは財産開示手続を申し立てようと考えている。そんな方は少し待ってください。財産開示手続は、相手を裁判所に呼び出す手続きなので、相手に「財産を調べられている」ことが伝わります。その間に、預金を引き出されたり、別の口座に移されたりするおそれがあります。この記事では、相手に知られずに財産を調べられる「弁護士会照会」を先に使ったほうがよい理由と、財産を調べる順番を解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 財産開示手続から始めてはいけない?
  • 相手に知られずに、預金口座を調べる方法はある?
  • 弁護士会照会で、どこまでわかる?
  • 財産が見つかったら、すぐに差し押さえられる?

この記事でわかること

  • 財産開示手続を先にすると困ること
  • 弁護士会照会が相手に知られずに使える理由
  • 財産を調べるおすすめの順番
  • 見つかった財産を確実に差し押さえるためのポイント

財産開示手続を先にすると困ること

財産開示手続は、裁判所が相手を呼び出し、自分の財産について説明させる手続きです。相手が正当な理由なく出頭しなかったり、うその説明をしたりすると刑事罰の対象になるため、以前より使いやすい手続きになりました。

ただ、財産開示手続を申し立てると、裁判所から相手に呼出しが届くため、相手は「財産を差し押さえられるかもしれない」と気づきます。その結果、次のようなことが起こるおそれがあります。

  • 預金を引き出されたり、家族名義の口座に移されたりする
  • 給料の振込先の口座を変えられる
  • 期日に出頭せず、財産の説明そのものが得られない

また、財産開示手続を申し立てるには、ほかの方法で財産を差し押さえても全額を回収できなかったことなど、一定の要件を満たす必要があります。

弁護士会照会は、相手に知られずに調べられる

弁護士会照会は、弁護士が所属する弁護士会を通じて、銀行などに必要な情報の回答を求める制度です。照会は弁護士会から銀行に直接送られ、相手(債務者)に通知する仕組みはないため、照会したことが相手に伝わることは通常ありません。

銀行の全店照会

判決や和解調書などの債務名義がある場合、多くの大手銀行が、弁護士会との取り決めにもとづいて、すべての支店を対象に、相手の口座があるかどうかや残高などを回答しています(全店照会)。支店がわからなくても、口座を見つけられる可能性があります。

POINT 相手に知られずに口座が見つかれば、相手が預金を動かす前に、差押えを申し立てることができます。財産を調べるときは、まず弁護士会照会から始めるのがおすすめです。

相手の財産の調査からご相談いただけます
判決や公正証書をお持ちいただければ、相手に知られずに財産を調べる方法と、差押えまでの段取りをご提案します。

財産を調べるおすすめの順番

1. 弁護士会照会(全店照会)相手の生活圏や取引先の銀行などに照会し、相手に知られずに口座を探す
2. すぐに差押え口座が見つかったら、間をあけずに預金の差押えを申し立てる
3. 第三者からの情報取得照会で見つからない場合、裁判所を通じて銀行や登記所などから情報を取得する
4. 財産開示手続それでも見つからない場合に、相手を呼び出して財産を説明させる

第三者からの情報取得手続でも、相手には、情報が提供されてから一定の期間がたった後に通知されます。そのため、情報が届いたら、通知が届く前に差押えを申し立てることが大切です。

見つかった財産を確実に差し押さえるために

  • 照会の回答が届いてから差押えを申し立てるまで、できるだけ間をあけない(残高は日々変わるため)
  • 差押えに必要な書類(判決正本・執行文・送達証明書など)を、照会の段階で先にそろえておく
  • 相手の給料日の直後など、残高が多くなりやすい時期を考えて申し立てる
  • 複数の銀行に口座がありそうなら、まとめて照会する

弁護士会照会の注意点

  • 弁護士会照会は、弁護士に依頼しないと使えません
  • 弁護士会と銀行に、それぞれ手数料がかかります(下の「照会の手数料」をご覧ください)
  • 銀行によっては、全店照会に応じていない場合や、債務名義の種類によって回答しない場合があります
  • ネット銀行など、相手が使っていそうな銀行の見当をつけることも大切です

照会の手数料は、弁護士会ごとに違う

弁護士会照会の手数料は、弁護士が所属する弁護士会ごとに決められていて、金額は弁護士会によって異なります。全店照会では、相手が口座を持っていそうな銀行に何行もまとめて照会することが多いため、照会の数が多くなるほど、実費の合計にも差が出てきます。弁護士に依頼するときは、弁護士費用だけでなく、照会にかかる実費もあわせて確認しておくとよいでしょう。

当事務所が所属する埼玉弁護士会で照会する場合の実費(照会手数料と郵送費)は、次のとおりです。

1通目4,680円
(照会手数料3,630円(税込)+簡易書留1,050円)
同じ内容で照会する2通目から1通2,150円
(照会手数料1,100円(税込)+簡易書留1,050円)

例えば、3つの銀行にまとめて照会する場合の実費は、4,680円+2,150円×2通=8,980円です。このほか、銀行によっては、銀行側の手数料が別にかかります。

埼玉県外の方のご依頼もお受けしています

弁護士会照会は、全国どこの銀行に対しても、埼玉弁護士会から行うことができます。預金や給料の差押えも、書類を郵送して申し立てるのが基本なので、相手の住所が遠方でも、裁判所に出向かずに進められることがほとんどです。ご相談や打ち合わせも、電話やオンラインで行えますので、埼玉県外の方もお気軽にご相談ください。

弁護士費用

財産の調査から差押えまでの弁護士費用は、債権回収・強制執行の弁護士費用のページに掲載しています。照会する銀行の数や、差押えの手続きの内容によって変わるため、ご依頼の前に費用の見通しをご説明します。

よくある質問

Q. 判決がなくても照会できる?

弁護士会照会そのものは、判決がなくても使える場合があります。ただ、銀行の全店照会は、判決などの債務名義があることを前提にしている銀行が多くあります。

Q. 回答までどのくらいかかる?

弁護士会での審査と銀行の回答に時間がかかるため、数週間程度かかることが多くあります。

Q. 財産開示手続は使わないほうがいい?

そうではありません。弁護士会照会や情報取得で財産が見つからない場合には、財産開示手続が有効な手段になります。順番が大切です。

まとめ

財産開示手続は、相手を裁判所に呼び出す手続きなので、相手に財産を調べていることが伝わり、預金を動かされるおそれがあります。相手の財産を調べるときは、まず相手に知られずに使える弁護士会照会(全店照会)から始め、口座が見つかったらすぐに差し押さえることが、確実な回収につながります。

財産開示手続を申し立てる前に、まずは弁護士にご相談ください。

この記事の監修

弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

青山学院大学法学部卒業。
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