監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
マッチングアプリで知り合った相手は「独身」だと言っていた。結婚の話もしていたのに、ある日、相手の配偶者から慰謝料を請求する書面が届いた。まさか既婚者だったなんて。そんなご相談は、決して珍しくありません。
不倫の慰謝料を支払う責任が生じるのは、相手が既婚者だと知っていた場合や、注意すれば気づけた場合です。相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに落ち度もない場合は、慰謝料を支払う責任は生じません。この記事では、「既婚者だと知らなかった」という主張が認められる場合と、そのために残しておきたい証拠を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 既婚者だと知らなかった。それでも慰謝料を払う必要がある?
- どんな場合に「知らなかった」が認められる?
- 途中で既婚者だと気づいた場合は?
- どんな証拠を残しておけばいい?
- だまされたこちらが、慰謝料を請求できる?
この記事でわかること
- 既婚者と知らなかった場合の責任の考え方
- 責任を負う可能性がある場合
- 証拠として残しておきたいもの
- だまされていた場合の対応
知らなかったことに落ち度がなければ、責任を負わない
不倫の慰謝料は、相手の夫婦の平穏な生活を壊したことに対する賠償です。そのため、相手が既婚者だと知っていた場合(故意)や、注意すれば知ることができた場合(過失)に、責任が生じます。
相手が独身だと偽っていて、それを信じたことに無理がなかった場合は、慰謝料を支払う責任は生じません。
責任を負う可能性がある場合
- 結婚指輪をしていた、指輪の跡があった
- 子どもの話をしていた、家族の存在をうかがわせる言動があった
- 週末や夜に会えないことが多いなど、不自然な点があったのに確かめなかった
- 共通の知人がいて、既婚者であることを知り得た
POINT 途中で既婚者だと知った場合は、知った後の関係について、責任を負う可能性があります。気づいた時点で関係を解消したかどうかも、判断に影響します。請求を受けたら、事実を認める前に弁護士にご相談ください。
「既婚者だと知らなかった」というご相談も受け付けています
交際の経緯を伺い、責任を負うかどうかの見通しをご説明します。
証拠として残しておきたいもの
- 相手が「独身」と言っていたメッセージのやりとり
- マッチングアプリなどで、独身と表示されていたプロフィールの画面
- 結婚を前提とした話をしていた記録(両親への紹介、将来の話など)
- 既婚者だと知ったときの状況と、その後の対応がわかる記録
「知らなかった」と主張するには、相手が独身だと信じたことに無理がなかったことを、具体的な資料で示すことが大切です。アプリを退会すると、記録が見られなくなることもあるため、早めに保存しておきましょう。
だまされていた場合の対応
独身だと偽られて関係を持った場合は、逆に、だました相手に対して、貞操権の侵害などを理由に慰謝料を請求できる場合があります。結婚の約束をしていたなど、事情によっては、請求が認められることもあります。詳しくは「既婚者だと知らずに交際していた|貞操権侵害で慰謝料を請求できる?」をご覧ください。
請求されたときの対応
慰謝料を請求する書面が届いたら、すぐに支払ったり、事実を認めたりせず、まずは交際の経緯を整理しましょう。対応の流れは「不倫の慰謝料を請求されたら」で解説しています。
よくある質問
Q. 「知らなかったはずがない」と言われた
知らなかったかどうかは、交際の経緯や、相手の言動などの具体的な事情から判断されます。こちらに有利な事情を示す資料を集めておきましょう。
Q. 知った後、すぐに別れた
知った後すぐに関係を解消した場合は、その事情が有利に考慮されます。知った時期と、別れた時期がわかる記録を残しておきましょう。
Q. 「独身と言った」と認めない
メッセージの記録や、アプリのプロフィールなど、客観的な資料が大切になります。早めに保存しておきましょう。
まとめ
相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに落ち度もなければ、慰謝料を支払う責任は生じません。途中で知った場合は、知った後の関係が問題になります。
知らなかったことを示す資料を確認したうえで、早めに弁護士にご相談ください。