監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
交通事故でご家族を亡くされたとき、保険会社から示される賠償額の中で、大きな割合を占めることが多いのが「死亡逸失利益」です。亡くなられた方が、生きていれば将来得られたはずの収入を、賠償として受け取るものです。計算にはいくつかの要素があり、どの数字を使うかによって、金額が大きく変わることがあります。この記事では、死亡逸失利益の計算のしかたと、保険会社の提示で注意したい点を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 死亡逸失利益とは、どんなもの?
- どうやって計算する?
- 専業主婦(主夫)や子ども、年金生活の家族の場合は?
- 保険会社の提示額は妥当?
この記事でわかること
- 死亡逸失利益とは
- 計算のしかたと、それぞれの要素
- 職業や立場ごとの考え方
- 保険会社の提示で注意したい点
死亡逸失利益とは
死亡逸失利益は、亡くなられた方が、事故にあわなければ働くなどして得られたはずの収入のことです。亡くなられた方の損害として、相続人が請求します。死亡慰謝料や葬儀費用とあわせて、死亡事故の賠償の中心になる項目です。
→ 死亡事故で請求できる損害の全体は「交通事故で家族を亡くされた方へ」
計算のしかた
死亡逸失利益は、次の式で計算します。
| 計算式 | 基礎収入 ×(1 − 生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
|---|
亡くなられた方は、将来の生活費がかからなくなるため、その分を差し引きます(生活費控除)。また、将来の収入を今まとめて受け取るため、その間の利息にあたる分を差し引きます(ライプニッツ係数)。
基礎収入の考え方
基礎収入は、原則として、事故の前の実際の収入をもとにします。職業や立場によって、次のように考えます。
| 会社員 | 事故の前年の給与の額(源泉徴収票など) |
|---|---|
| 自営業の方 | 確定申告の所得の額 |
| 専業主婦(主夫) | 女性の平均賃金(賃金センサス) |
| 子ども・学生 | 男女別または男女計の平均賃金(賃金センサス) |
| 年金を受け取っていた方 | 受け取っていた年金も、逸失利益として認められることがある |
収入が平均より低い若い方や、仕事をしていなかった方でも、将来の収入の見込みによっては、平均賃金をもとに計算できる場合があります。
生活費控除率
生活費控除率は、亡くなられた方の家庭での立場などによって、次のような目安があります(弁護士基準)。
| 一家の支柱で、扶養する家族が1人 | 40% |
|---|---|
| 一家の支柱で、扶養する家族が2人以上 | 30% |
| 女性(専業主婦、独身の方、子どもなどを含む) | 30% |
| 男性(独身の方、子どもなどを含む) | 50% |
年金を基礎収入とする部分は、生活費にあてられる割合が高いと考えられ、生活費控除率が高めに設定されることがあります。
ご遺族からのご相談をお受けしています
保険会社から提示された金額が妥当かどうか、弁護士が確認します。ご負担の少ない形でのご相談についても、お気軽にお問い合わせください。
就労可能年数とライプニッツ係数とは
就労可能年数
働くことができたはずの年数で、原則として67歳までとして計算します。高齢の方は、「67歳までの年数」と「平均余命の2分の1」のうち、長いほうを使うのが一般的です。子どもの場合は、原則として18歳から67歳まで(大学への進学が見込まれる場合は、卒業の年齢から)とします。
ライプニッツ係数
将来の収入を、今まとめて受け取ることによる利息分を差し引くための数字です。2020年4月1日以降の事故では、年3%の利率で計算します。年数が長いほど、係数は大きくなります。
計算例
例えば、事故の前年の年収が500万円の40歳の会社員で、妻と子ども2人を扶養していた場合は、次のようになります。
| 基礎収入 | 500万円 |
|---|---|
| 生活費控除率 | 30%(一家の支柱で、扶養する家族が2人以上) |
| 就労可能年数 | 27年(67歳まで) |
| ライプニッツ係数 | 18.3270(年3%・27年) |
| 死亡逸失利益 | 500万円 × 0.7 × 18.3270 = 約6,414万円 |
実際の金額は、収入の資料や家族の状況、過失の割合などによって変わります。
保険会社の提示で注意したい点
保険会社の提示では、次のような点で、ご遺族に不利な数字が使われていることがあります。
- 基礎収入が、実際の収入や平均賃金より低く見積もられている
- 生活費控除率が、目安より高く設定されている
- 就労可能年数が、短く計算されている
- 専業主婦(主夫)や子ども、年金生活の方の逸失利益が、低く見積もられている
POINT 数字の使い方が少し違うだけで、逸失利益は数百万円から数千万円変わることがあります。示談書にサインする前に、弁護士にご相談ください。
よくある質問
Q. 子どもの場合も請求できる?
請求できます。将来働いて得られたはずの収入として、平均賃金をもとに計算するのが一般的です。
Q. 無職だった家族の場合は?
専業主婦(主夫)の方は、家事労働を収入として評価します。そのほかの方も、働く意欲や見込みがあれば、認められることがあります。
Q. 過失がある場合はどうなる?
亡くなられた方にも過失がある場合は、その割合に応じて、賠償額が減ることがあります(過失相殺)。
まとめ
死亡逸失利益は、基礎収入、生活費控除率、就労可能年数(ライプニッツ係数)の3つで計算し、どの数字を使うかで金額が大きく変わります。保険会社の提示額が、亡くなられた方の事情を十分に反映しているとは限りません。
お気持ちの整理がついた段階で、提示された金額が妥当かどうか、お気軽にご相談ください。