医師法違反とは|エステ・美容サロンの施術が罪になる場合

監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

エステサロンで行っていた脱毛の施術について、警察から話を聞きたいと連絡があった。お客さんから「やけどをした」と言われ、医師法違反ではないかと指摘されている。医師でない人が、医師でなければできない施術を仕事として行うと、医師法違反として罪に問われることがあります。

医師になるには、医師国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受ける必要があり、医師だけが「医業」を行えると法律で定められています。人の命や体に深く関わる仕事だからです。この記事では、医師法違反にあたる行為と刑罰、「医業」「医行為」の意味、裁判などで問題になった施術の例、お客さんにけがをさせた場合の罪、捜査の流れと処分の見通しを解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • エステや美容サロンでの施術で、警察から連絡があった
  • どんな施術が医師法違反になる?
  • お客さんにやけどをさせてしまった
  • お店の経営者や、協力していた医師も責任を問われる?
  • 医師法違反の刑罰は、どのくらい?

この記事でわかること

  • 医師法違反にあたる行為と刑罰
  • 「医業」と「医行為」の意味
  • 医行為とされた施術・されなかった施術の例
  • けがをさせた場合の罪と、捜査・処分の見通し

医師法違反とは

医師法では、「医師でなければ、医業をしてはならない」と定められています。医師でない人が医業を行うと、医師法違反(無資格での医業)として処罰されます。歯科医師法でも、同じように、歯科医師でない人が歯科医業を行うことが禁止されています。

POINT 「お客さんが同意していた」「けがをさせていない」という場合でも、医師でない人が医行為を仕事として行えば、医師法違反になります。

医師法違反の刑罰

医師法違反(無資格での医業)の刑罰は、3年以下の拘禁刑、もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です。歯科医師法違反(無資格での歯科医業)も、同じ重さの刑罰が定められています。

「医業」と「医行為」の意味

「医業」とは、医師の医学的な判断や技術がなければ体に危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、繰り返し続けるつもりで行うことをいいます。お金を受け取っていなくても、繰り返し行うつもりで施術をしていれば、医業にあたることがあります。

絶対的医行為医師でなければ行うことができない行為
相対的医行為医師の指示のもとで、看護師などの資格を持つ人が補助として行える行為

ある行為が医行為にあたるかどうかは、行為の内容や方法などから、一つひとつ具体的に判断されます。

医行為とされた施術の例

医療用レーザー脱毛レーザーを当てて、毛根などを破壊する方法による脱毛(裁判例や厚生労働省の通知で、医行為とされています)
注射による美容施術ヒアルロン酸やボトックスなどを注射する施術
アートメイク針で皮膚に色素を入れる、入れ墨に似た美容施術(裁判例で、医行為とされています)
薬剤によるピーリング医療用の強い薬剤で、皮膚の表面をはがす施術
コンタクトレンズのための検査コンタクトレンズを処方するための目の検査や、テスト用レンズの付け外し(最高裁判所の判断で、医行為とされています)
病気の治療を目的とした問診病気の治療や予防を目的として、症状や病歴を尋ねる行為(断食道場での問診が、医行為とされた例があります)

歯科の分野でも、歯科技工士が患者の口の中で入れ歯などを削る行為が、歯科医行為にあたるとされた裁判例があります。

医師法違反のご相談を受け付けています
お店の経営者の方、スタッフの方のどちらのご相談もお受けしています。警察から連絡があったら、早めにご相談ください。

医行為にあたらない例

一方で、次のような行為は、原則として医行為にはあたらないとされています。

  • 体温計での体温の測定や、自動血圧測定器での血圧の測定
  • 専門的な判断や技術がいらない、軽い切り傷やすり傷、やけどの手当て
  • 一定の条件のもとで、医師の処方を受けた軟膏を塗る・湿布を貼る・目薬をさすといった手助け

POINT タトゥー(入れ墨)の施術は、2020年の最高裁判所の判断で、医行為にはあたらないとされました。タトゥーは、医療や保健指導を目的とする行為ではないと判断されたためです。

マッサージ・整体の場合

病気の治療や健康のために行うマッサージ、はり・きゅう、骨折やねんざの施術などは、「医療類似行為」と呼ばれます。これらは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の資格がある人が行うものとされ、医師法とは別の法律で、資格のない人が仕事として行うことが禁止されています。

ただし、最高裁判所は、この禁止の対象を、人の健康に害を及ぼすおそれのある行為に限ると判断しています。

医師が関わっていた場合

医師が、資格のない人の施術に協力したり、加わったりしていた場合は、その医師も、医師法違反の共犯として責任を問われることがあります。医師の資格を持っていても、他人の無資格の医業に協力してよいわけではないからです。

POINT 「医師の名前を借りていた」「院長として名前だけ貸していた」といった場合も、責任が問題になることがあります。

けがをさせた場合

施術によってお客さんにやけどなどのけがをさせた場合は、医師法違反とは別に、傷害罪や業務上過失致傷罪に問われることがあります。業務上過失致傷罪の刑罰は、5年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金です。

傷害罪については、「暴行・傷害事件で捜査を受けている方へ」で解説しています。

捜査の流れ

  • けがをしたお客さんが、警察や保健所に相談する
  • 保健所の調査や、警察の捜査が始まる
  • お店の家宅捜索が行われ、機器や顧客の記録が押収されることもある
  • 経営者やスタッフが、逮捕されたり、在宅のまま呼び出しを受けたりする

逮捕された後の流れは「逮捕されている場合の刑事事件の流れ」、逮捕されずに捜査を受ける場合は「在宅事件の場合の流れと対応」で解説しています。

処分の見通しと示談

処分は、施術の内容や期間、施術した人数、けがをさせたお客さんの有無などによって変わります。けがをしたお客さんがいる場合は、その方との示談が、処分の判断に大きく影響します。

  • けがをしたお客さんへの謝罪と、治療費などの弁償
  • 問題になった施術をやめ、営業の内容を見直す
  • 医師と連携するなど、適法な形での営業に切り替える

よくある質問

Q. 経営者も責任を問われる?

経営者がスタッフに施術をさせていた場合は、経営者も医師法違反の責任を問われることがあります。実際に施術をしたスタッフも、責任を問われる可能性があります。

Q. 医師の指示があった場合

医師の指示があっても、看護師などの資格がない人が医行為を行うことはできません。どのような体制で施術していたかを詳しく伺って、見通しをご説明します。

Q. 医師として、スタッフの施術に協力していました。

医師が、資格のない人の施術に協力・加担していた場合は、医師も医師法違反の共犯として責任を問われることがあります。早めにご相談ください。

Q. もう施術はやめています。過去の施術も問題になりますか?

過去に行っていた施術も、捜査の対象になることがあります。すでにやめていることは、処分の判断で考慮される事情になります。

まとめ

医師でない人が、医師でなければ体に危害を及ぼすおそれのある施術を仕事として行うと、医師法違反として、3年以下の拘禁刑、もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります。

医療用レーザー脱毛やアートメイクなど、医行為とされた施術は少なくありません。お客さんにけがをさせた場合は、傷害罪などにも問われることがあります。警察から連絡があったら、早めにご相談ください。

この記事の監修

弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

青山学院大学法学部卒業。
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