監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
治療が終わってしばらくすると、保険会社から「損害賠償額のご案内」といった書類が届きます。そこには、治療費、慰謝料、休業損害などの金額が並び、最後に「お支払額」が書かれています。でも、この金額が妥当なのか、自分では判断がつかない。そう感じる方がほとんどだと思います。
保険会社の提示額は、裁判で使われる基準より低く計算されていることが少なくありません。示談書にサインすると、原則としてやり直しはできないため、サインする前に内容をしっかり確認することが大切です。
この記事では、示談案の内訳の見方と、サインする前に確認したいポイントを解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 提示された示談金は、妥当な金額?
- 書類のどこを見ればいい?
- 早く示談したほうがいいと言われた
- サインした後に、やり直すことはできる?
- 弁護士に相談すると、金額は変わる?
この記事でわかること
- 示談案の主な内訳と、その見方
- 保険会社の提示額が低くなりやすい理由
- サインする前の確認ポイント
- 弁護士に相談すると変わること
示談案の主な内訳
| 治療費・通院交通費 | 病院の治療費や、通院にかかった交通費 |
|---|---|
| 休業損害 | けがのために仕事や家事ができなかったことによる損害 |
| 入通院慰謝料 | 入院や通院をしたことによる精神的な苦痛への賠償 |
| 後遺障害慰謝料・逸失利益 | 後遺障害が認定された場合の賠償 |
| 過失相殺 | ご自身の過失の割合の分、差し引かれる金額 |
| 既払金 | すでに支払われた治療費などで、差し引かれる金額 |
まずは、どの項目にいくら計上されているか、計上されていない項目がないかを確認しましょう。
提示額が低くなる理由
慰謝料の計算には、自賠責保険の基準、保険会社がそれぞれ定める基準、裁判で使われる基準(弁護士基準)の3つがあります。保険会社の提示は、多くの場合、弁護士基準より低い基準で計算されています。
- 慰謝料が、自賠責保険の基準や保険会社の基準で計算されている
- 休業損害の計算の日数や金額が、実際より少ない
- 主婦(主夫)の家事ができなかった分が、含まれていない
- 過失割合が、事故の状況に比べて不利になっている
示談案のチェックのご相談を受け付けています
保険会社からの書類をお持ちいただければ、内容を確認し、増額の見込みをご説明します。
サインする前の確認ポイント
- 慰謝料が、どの基準で計算されているか(「当社基準」などと書かれていることもある)
- 休業損害が、実際の収入や休んだ日数に見合っているか
- 主婦(主夫)の場合、家事ができなかった分が含まれているか
- 過失割合が、事故の状況に照らして妥当か
- 後遺障害が認定されている場合、逸失利益が計算されているか
- 入院や通院の付き添いの費用(付添費)や、入院中の日用品などの費用(入院雑費)が含まれているか
- 通院交通費や、コルセット・松葉づえなどの装具の費用が漏れていないか
POINT 示談書にサインすると、原則としてその内容で解決したことになり、後から追加で請求することは難しくなります。サインする前に、必ず弁護士に示談案を見てもらいましょう。
「早く示談を」と言われても、急がなくてよい
保険会社から、早めに示談書を返送するよう求められることがあります。ただ、内容に納得できないまま急いでサインする必要はありません。確認や交渉のための時間をとることは、ご本人の正当な権利です。
弁護士に相談すると変わること
弁護士が交渉する場合は、裁判で使われる基準をもとに損害額を計算し直して、保険会社と交渉します。そのため、提示額から増額できる可能性があります。一方で、事案によっては、提示額が妥当で、大きく変わらないこともあります。相談の段階で、計算の見直しによる見込みをご説明します。
ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、多くの場合、弁護士費用の負担なく依頼できるため、依頼するメリットがあります。特約がない場合でも、増額の見込みが弁護士費用を上回り、依頼するメリットが出る場合があります。相談の段階で、費用と見込みをあわせてご説明します。
よくある質問
Q. 示談書にサインした後でも、やり直せますか?
原則として、やり直すことはできません。ただし、示談のときに予想できなかった後遺障害が後から生じた場合など、例外的に追加の請求が認められることもあります。
Q. 示談金が増えても、弁護士費用で減ってしまいませんか?
弁護士費用特約を使えば、多くの場合、弁護士費用の負担なく依頼でき、メリットがあります。特約がない場合でも、増額の見込みが弁護士費用を上回り、メリットが出る場合があります。増額の見込みと費用を比べて、依頼するかどうかを判断していただけます。
Q. 今からでも間に合う?
示談書にサインしていなければ、交渉できる可能性があります。お早めにご相談ください。
まとめ
示談案が届いたら、内訳を確認し、慰謝料の基準や休業損害、過失割合が妥当かを見極めることが大切です。
示談書にサインした後は、原則としてやり直しができません。少しでも疑問があれば、書類を持って、サインする前にご相談ください。