監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
相手は自営業で、「売上はあるけれど利益は少ない」と言っている。会社の役員で、役員報酬のほかに会社の経費で車や食事を賄っているようだ。婚姻費用や養育費を決めるとき、会社員なら源泉徴収票で収入がはっきりしますが、自営業者や会社役員の場合は、「収入をいくらとみるか」で大きく争いになります。この記事では、自営業・会社役員の収入の認定のしかたと、確認したい資料を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 自営業の相手の収入は、確定申告書のどこを見ればいい?
- 経費で落としている分は、収入に戻される?
- 役員報酬を自分で低くしている相手はどうなる?
- 相手が資料を出さない場合は?
この記事でわかること
- 自営業者の収入の計算のしかた(確定申告書の見方)
- 収入に加算される経費・控除
- 会社役員の収入の考え方
- 資料を出さない相手への対応
自営業者の収入の計算のしかた
自営業者の場合、算定表に当てはめる収入は、確定申告書の「課税される所得金額」を出発点にします。ただし、これは税金の計算のための金額なので、そのままでは実際に生活に使えるお金を表していません。そこで、次のような控除を足し戻して計算します。
- 社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などの各種控除(実際に支払った社会保険料は、別に差し引く扱いになります)
- 青色申告特別控除
- 減価償却費のうち、実際には支出していない部分(事案による)
- 基礎控除、配偶者控除、扶養控除など
計算は複雑なため、確定申告書の写し(できれば決算書・収支内訳書も)を、弁護士にお見せください。
経費が争いになる場合
事業の経費として計上されているものの中に、実質的には生活費に当たるものがある場合は、その分を収入に戻して計算することを主張できます。
- 家族で使っている車のガソリン代や車両費
- 自宅の家賃や光熱費の一部
- 家族との食事や旅行など、私的な支出
POINT 自営業者の婚姻費用・養育費は、「課税所得」で計算するか「実態」で計算するかで、金額が大きく変わります。確定申告書は、必ず控えの全ページ(決算書を含む)を確認しましょう。
自営業・会社役員の方との婚姻費用・養育費のご相談をお受けしています
確定申告書や決算書を拝見し、収入をいくらと主張できるかの見通しをお伝えします。
会社役員の収入
会社役員の場合は、役員報酬が給与所得として扱われます。ただ、次のような事情があるときは、役員報酬の額だけで判断されないことがあります。
- 相手が会社の経営を支配していて、自分で役員報酬を低く設定している
- 会社の経費で、相手や家族の生活費が賄われている
- 役員報酬のほかに、配当や役員貸付金の形でお金を受け取っている
こうした場合は、会社の決算書や総勘定元帳なども確認し、実質的な収入を主張していきます。
資料を出さない相手への対応
相手が収入の資料を出さない場合、調停や審判の中で、裁判所から税務署や会社に対して資料の提出を求める「調査嘱託」を申し立てることができます。それでも明らかにならない場合は、生活水準や過去の収入、統計上の平均賃金などから推定して主張します。
逆の立場の方へ
自営業や会社役員で、支払う側の方は、確定申告書の課税所得だけで計算されると不利になることもあります(実際に支払っている社会保険料など)。正確な資料をそろえて、適正な金額を主張することが大切です。
よくある質問
Q. 相手が赤字申告をしている
赤字申告でも、生活の実態や経費の内容から、実際には収入があると主張できる場合があります。
Q. 確定申告書はどうやって手に入れる?
同居中に控えのコピーを取っておくのが確実です。別居後は、調停の中で提出を求めたり、調査嘱託を使ったりします。
Q. 会社の決算書も見られる?
調停や審判の中で、相手の会社の決算書の提出を求めることができます。相手が経営を支配している会社であれば、認められることが多くあります。
まとめ
自営業者の収入は、確定申告書の課税所得に各種控除を足し戻して計算し、生活費に当たる経費があれば加算を主張できます。会社役員は役員報酬が基本ですが、報酬を低く設定している場合や会社の経費で生活している場合は、実質的な収入が問題になります。
確定申告書や決算書を拝見すれば、主張できる収入の見通しをお伝えできます。資料を持ってご相談ください。