預金の特有財産|結婚前の貯金と混ざった口座

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

結婚する前に、コツコツ貯めた預金が300万円あった。結婚後もその口座を使い続け、給料もそこに振り込まれ、生活費もそこから引き出していた。離婚するとき、この口座の残高は、全部相手と半分に分けないといけないのだろうか。結婚前の預金は特有財産で、財産分与の対象になりません。ただ、結婚後のお金と同じ口座で混ざっていると、どこまでが特有財産かの証明が難しくなります。この記事では、預金の特有財産の考え方と、口座が混ざっている場合の計算、証明のための資料を解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 結婚前の預金は、財産分与で分けなくていい?
  • 結婚後も同じ口座を使っていた場合は?
  • 結婚前の残高は、どうやって証明する?
  • 定期預金や利息はどうなる?

この記事でわかること

  • 結婚前の預金が特有財産になる考え方
  • 口座が分かれている場合と、混ざっている場合の違い
  • 混ざっている場合の計算と、特有財産が認められにくい場合
  • 証明に必要な資料と、取り寄せの注意点

結婚前の預金は特有財産

結婚する前に自分の収入で貯めた預金は、夫婦の協力とは関係なく得た財産なので、特有財産として財産分与の対象になりません。親から相続したお金や、贈与を受けたお金を預けている場合も同じです。

一方、結婚後の給料から貯めた預金は、どちらの名義の口座に入っていても共有財産で、財産分与の対象です。

口座が分かれている場合と混ざっている場合

① 口座が分かれている場合独身時代の口座300万円結婚後の給与口座500万円特有財産(対象外)共有財産(対象)→ 分けやすく、証明もしやすい② 1つの口座で混ざっている場合結婚後の給与の入金生活費の引出し結婚時の残高300万円別居時の残高800万円- 結婚時の残高300万円= 共有財産500万円※ この計算は考え方の一つです。結婚期間が長い場合や残高が一度大きく減った場合は、全額が共有とされることも
図 預金が分かれている場合・混ざった場合

口座が分かれている場合

結婚前の預金をそのまま別の口座に残していて、結婚後の給料はほかの口座に入れていた場合は、結婚前の口座の残高を特有財産として、比較的簡単に主張できます。

1つの口座で混ざっている場合

結婚前の預金が入っていた口座に、結婚後の給料が入金され、生活費の引出しもしていた場合、どこまでが特有財産かについては、実務でも考え方が分かれています。

考え方1別居時の残高から、結婚時の残高を差し引いた額を共有財産とする(結婚時の残高は特有財産として残っているとみる)
考え方2夫婦の預金は1つの家計として入出金を繰り返すものなので、原則として別居時の残高の全額を共有財産とし、結婚時の残高があったことは、分け方(寄与の程度)の中で考慮する。結婚期間が長い(5年以上が目安)場合は、分け方に差をつける必要はないとする

裁判例では、口座ごとに特有・共有を細かく分けるのではなく、お金の流れを全体として見て、特有財産として残っているといえる金額を総額で認定した例もあります。どちらの考え方が取られるかは、結婚期間の長さ、家計の状況、お金の流れをどこまで具体的に示せるかによって変わります。

POINT 口座が混ざっている場合は、「結婚時の残高があった」というだけでは足りず、そのお金が別居時にも残っているといえる理由(お金の流れ)を、通帳や取引履歴で丁寧に示すことが大切です。結婚期間が長いほど、全額が共有財産とされやすくなります。

預金の特有財産を含む財産分与のご相談をお受けしています
通帳や取引履歴を拝見し、特有財産として主張できる額の見通しをお伝えします。

特有財産が認められにくい場合

口座が混ざっていると、特に次のような場合には、特有財産が残っていないと判断されやすくなります。

  • 結婚後に、口座の残高が結婚時の残高を大きく下回った時期がある(特有財産が生活費などに使われたとみられる)
  • 結婚時の残高がわかる資料がない
  • 口座の出入りが多く、特有財産がどこに行ったかを説明できない

残高が一度大きく減った後に増えた場合、増えた分は結婚後の収入によるものとみられ、共有財産と判断されやすくなります。また、結婚期間が長くなるほど、結婚時の残高が今の財産に与える影響は小さいとみられ、全額を共有財産として分けるべきだと判断されやすくなります。

定期預金や利息

  • 結婚前から続けている定期預金:元本は特有財産。満期で別の口座に移した場合は、お金の流れを示せれば特有財産として主張できる
  • 特有財産の預金についた利息:特有財産から生じたものとして、特有財産とされることが多い
  • 結婚前の預金で買った株式や投資信託:特有財産が形を変えたものとして主張できる(購入の資料が必要)

証明に必要な資料

  • 結婚した日(婚姻届の日)の前後の通帳、または銀行の取引履歴
  • 結婚前の預金を別の口座や定期預金に移した場合は、その流れがわかる資料
  • 相続・贈与のお金であれば、遺産分割協議書や振込の記録

銀行の取引履歴は、取り寄せられる期間(10年程度)が限られていることが多く、結婚から長い年月がたっている場合は、手元の古い通帳が大切な証拠になります。捨てずに保管しておきましょう。

よくある質問

Q. 結婚前の預金を、結婚後に家族旅行に使った

使ってしまった特有財産は残っていないため、分与の計算では考慮されません。残っている分だけが問題になります。

Q. 結婚前の通帳をなくした

銀行に取引履歴の開示を請求できますが、取り寄せられる期間には限りがあります。早めに確認しましょう。

Q. 相手が「結婚前から貯金していた」と言うが、証拠を出さない

特有財産であることは、主張する側が証明する必要があります。証拠がなければ、共有財産として扱うよう主張できます。

まとめ

結婚前の預金は特有財産で、財産分与の対象になりません。口座が分かれていれば主張しやすく、1つの口座で混ざっている場合は、結婚時の残高を差し引く考え方と、全額を共有財産としたうえで分け方で考慮する考え方があり、結婚期間の長さやお金の流れによって判断が変わります。途中で残高が大きく減っている場合や、資料がない場合は、特有財産は認められにくくなります。

結婚時点の通帳や取引履歴を確保して、ご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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