父の死因が中皮腫だった|何年前でも補償される?

監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

父が10年前に中皮腫で亡くなった。当時は病気のことで頭がいっぱいで、補償のことなど考える余裕はなかった。最近になって、アスベストの給付金のことを知ったけれど、もう何年もたっている。今からでも、何か受けられるのだろうか。亡くなってから時間がたっていても、受けられる補償はあります。ただし、制度ごとに「いつまでに請求するか」の期限が決まっていて、亡くなった時期によって使える制度が変わります。この記事では、亡くなった時期ごとに、ご遺族が使える制度と期限をまとめました。

こんな疑問はありませんか?

  • 亡くなってから何年もたっているが、補償は受けられる?
  • 中皮腫で亡くなったら、どの制度が使える?
  • 制度ごとの請求の期限は?
  • 仕事でアスベストを吸ったかどうか、はっきりしない

この記事でわかること

  • 亡くなった時期と、使える制度の関係
  • 労災の遺族補償・特別遺族給付金・建設アスベスト給付金・石綿健康被害救済制度の期限
  • 中皮腫は認定されやすい病気であること
  • 今すぐ確認したいこと

亡くなってから時間がたっていても、受けられる補償がある

中皮腫は、アスベストを吸ったこと以外ではほとんど起こらない病気です。そのため、中皮腫で亡くなった場合、亡くなった方が仕事などでアスベストを吸った経緯が確認できれば、ご遺族への補償が認められやすい病気です。

アスベストの病気は、吸ってから発症するまで20〜40年かかるため、国は、亡くなってから何年もたった後でも請求できるように、制度ごとに長い期限を設けています。「もう遅い」と思わずに、まずは亡くなった時期と、受けられる制度を確認してください。

亡くなった時期と使える制度

仕事でアスベストを吸った方(労働者)が亡くなった場合、ご遺族が使える制度は、主に次の4つです。亡くなった時期によって、使える制度が変わります。

労災の遺族補償(年金・一時金・葬祭料)亡くなった日の翌日から5年以内に請求(葬祭料は2年以内)。期限内なら、まず労災を請求する
特別遺族給付金(石綿健康被害救済法)労災の遺族補償の5年の期限を過ぎてしまったご遺族のための制度。2026年3月26日までに亡くなった方のご遺族が対象で、請求期限は2032年3月27日。特別遺族年金(年240万円〜)または特別遺族一時金(1,200万円)
建設アスベスト給付金建設現場で働いていた方(一人親方も含む)が対象。中皮腫などの診断日、または亡くなった日の、いずれか遅いほうから20年以内に請求。中皮腫で亡くなった場合は1,300万円
国への損害賠償(アスベスト訴訟の和解)一定の時期に工場や建設現場で働いていた方が対象。被害を知ってから5年、最も重い症状が出てから20年の制限がある

POINT 労災の5年の期限を過ぎていても、特別遺族給付金で補える場合があります。建設現場で働いていた方なら、建設アスベスト給付金(20年)もあわせて請求できます。制度は重ねて受けられるものもあるので、一つずつ確認が必要です。

ご家族をアスベストの病気で亡くされた方のご相談をお受けしています
亡くなった時期と仕事の内容を伺い、今からでも使える制度と、請求の期限をお伝えします。

仕事以外でアスベストを吸った場合

工場の近くに住んでいた、家族の作業着を洗っていたなど、仕事以外でアスベストを吸って中皮腫になった方のご遺族には、石綿健康被害救済制度(環境再生保全機構)の特別遺族弔慰金(280万円)と特別葬祭料があります。

請求期限は、亡くなった時期によって異なり、2008年12月1日以降に亡くなった方については、亡くなった日の翌日から25年以内です。それより前に亡くなった方にも、2032年や2033年までの期限が設けられています。

今すぐ確認したいこと

  • 亡くなった日(死亡診断書や戸籍で確認)
  • 死亡診断書の死因に「中皮腫」「悪性胸膜中皮腫」などと書かれているか
  • 亡くなった方の職歴(建設業、造船、工場、解体など。年金の記録で確認できる)
  • 労災や給付金を、すでに誰かが請求していないか

職歴や病気の資料がそろっていなくても、ご遺族が集める方法があります。

請求できるご遺族

労災の遺族補償、特別遺族給付金、建設アスベスト給付金は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、順位が最も高いご遺族が請求します。相続人が複数いる場合の扱いは、別の記事で解説しています。

よくある質問

Q. 父が亡くなったのは20年以上前。もう無理?

制度によっては期限を過ぎている可能性がありますが、特別遺族給付金や石綿健康被害救済制度は、古い時期に亡くなった方のご遺族にも期限が設けられています。あきらめる前に、亡くなった日と病名を確認してご相談ください。

Q. 死亡診断書の死因が「肺がん」だった

肺がんは、アスベストが原因かどうかの確認が必要です。別の記事で解説しています。

Q. 母はすでに補償を受けていた。子どもの自分も請求できる?

労災や給付金は、順位の高いご遺族が1人で請求する仕組みなので、配偶者が受け取っていれば、子が重ねて受け取ることは原則できません。国への損害賠償は、相続人がそれぞれ請求できます。

まとめ

中皮腫で亡くなった方のご遺族は、亡くなってから時間がたっていても、労災の遺族補償(5年)、特別遺族給付金(2032年3月27日まで)、建設アスベスト給付金(20年)、石綿健康被害救済制度などの補償を受けられる可能性があります。亡くなった日・病名・職歴を確認して、使える制度と期限を一つずつ確かめることが大切です。

「もう遅いかもしれない」と思っている方こそ、一度ご相談ください。

この記事の監修

弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

青山学院大学法学部卒業。
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