監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
父がアスベストの病気で亡くなった。補償の請求には、父がどこで働いていたか、どんな病気だったかの資料が必要だと聞いたが、本人はもういない。昔の勤め先も、とっくになくなっている。こんな状態で、資料を集められるのだろうか。ご本人が亡くなった後でも、職歴や病気の資料を集める方法はあります。この記事では、ご遺族が集められる資料と、その取り寄せ方を、職歴と病気に分けて解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 本人が亡くなった後でも、職歴を証明できる?
- 勤め先がなくなっている場合は?
- カルテや検査の記録は、いつまで残っている?
- 自分で集められないときは?
この記事でわかること
- 職歴を証明する資料(年金記録・雇用保険・同僚の証言など)
- 病気を証明する資料(死亡診断書・カルテ・病理標本・画像)
- 資料ごとの保存期間と、急いだほうがよいもの
- 弁護士が代わりに集められる資料
職歴を証明する資料
アスベストの補償では、「いつ・どこで・どんな仕事をしていたか」が最も重要です。ご本人がいなくても、次のような資料で確認できます。
| 年金の加入記録 | 年金事務所で、ご遺族が亡くなった方の「被保険者記録照会回答票」を取り寄せられる。勤め先の名前と加入期間がわかる。最も基本になる資料 |
|---|---|
| 雇用保険の記録 | ハローワークで、被保険者であった期間や事業所名を確認できる場合がある |
| 勤め先の資料 | 会社が残っていれば、在籍証明や作業内容の証明を依頼する。なくなっていても、法人登記で当時の所在地や代表者がわかることがある |
| 同僚や取引先の証言 | 一緒に働いていた方の陳述書は、作業内容(アスベストを扱う作業だったか)を示す大切な資料になる |
| 一人親方の場合 | 確定申告書の控え、請求書・領収書、建設国保や労災の特別加入の記録、元請けとの契約書など |
| 本人が残したもの | 手帳、日記、写真、資格証(石綿作業主任者など)、給与明細、名刺 |
POINT 年金の加入記録は、ご遺族(配偶者・子など)であれば取り寄せられます。まずこれで勤め先と期間を確認し、そこから作業内容を示す資料をたどっていくのが基本の流れです。
病気を証明する資料
| 死亡診断書(死体検案書) | 死因と病名が書かれている。役所に提出した後も、提出時の控えや、病院での再発行で入手できる |
|---|---|
| カルテ(診療録) | 病院の保存義務は5年(最後の診療から)。それを過ぎると廃棄されていることもあるため、早めに開示請求する |
| 病理標本・病理診断の記録 | 手術や検査で採った組織の標本は、長期間保存されていることが多い。中皮腫の確定診断や、肺の中の石綿小体の有無の確認に使える |
| レントゲン・CTの画像 | 胸膜プラーク(アスベストを吸った跡)や石綿肺の所見は、画像で確認する。保存期間は病院により異なる |
| 労災や救済制度の記録 | 生前に労災を請求していたり、石綿健康被害救済制度の認定を受けていた場合は、その記録が残っている |
カルテの開示請求は、ご遺族(配偶者・子・父母など)が病院に申し込みます。本人との関係がわかる戸籍と、本人確認書類が必要です。
資料集めから、弁護士がお手伝いします
ご遺族が取り寄せにくい資料も、弁護士が照会や取り寄せを代わりに行えます。
急いだほうがよい資料
- カルテ:保存義務が5年のため、最後の診療から時間がたっている場合は、すぐに開示請求する
- 同僚の証言:年月がたつほど、連絡が取れなくなったり、記憶があいまいになったりする
- 勤め先の資料:会社の廃業や倒産で、資料が散逸してしまう
弁護士が代わりに集められるもの
弁護士に依頼すると、ご遺族が自分で集めにくい資料を、弁護士会照会などの手続きで取り寄せることができます。
- 当時の勤め先や元請けの会社への照会(在籍、作業内容、現場の記録)
- 労働基準監督署に残っている、同じ職場の労災認定の記録の確認
- 病院からのカルテ・病理標本の取り寄せ
- 同僚の方への聞き取りと、陳述書の作成
→ 職歴の資料がない場合の考え方は「どこでアスベストを吸ったかわからない、昔の職歴の資料がないとき」
よくある質問
Q. 年金の記録は、誰が取り寄せられる?
亡くなった方の配偶者、子、父母などのご遺族が、年金事務所で請求できます。本人との関係がわかる戸籍などが必要です。
Q. 病院がなくなっていた
カルテは廃業後も一定期間保存されていることがあります。引き継いだ病院や、地域の医師会に問い合わせます。
Q. 父から「アスベストの仕事をしていた」と聞いただけで、資料は何もない
お話の内容(現場の場所、時期、作業)をできるだけ詳しく書き留めておいてください。そこから、年金記録や会社の資料をたどって裏付けていきます。
まとめ
ご本人が亡くなった後でも、年金の加入記録・雇用保険の記録・同僚の証言などで職歴を、死亡診断書・カルテ・病理標本・画像で病気を証明できます。カルテの保存義務は5年なので、早めに開示請求することが大切です。ご遺族が集めにくい資料は、弁護士が照会や取り寄せを代わりに行えます。
資料がそろっていなくても、まずはご相談ください。