給付金を受け取る遺族は誰?|相続人が複数

監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

父がアスベストの病気で亡くなった。母はすでに他界していて、子どもは自分を含めて3人。給付金は、誰が請求して、誰が受け取るのだろうか。兄弟で分けるのだろうか。アスベストの補償には、「決まった順位のご遺族が1人で受け取るもの」と「相続人全員で分けるもの」があり、制度によって考え方が違います。この記事では、制度ごとの受け取る人の決まり方と、兄弟の間でもめないための注意点を解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 給付金は、相続人で分ける?
  • 請求できるご遺族の順位は?
  • 兄弟の1人だけが請求できるの?
  • 受け取った給付金は、相続の対象になる?

この記事でわかること

  • 「決まった順位のご遺族が受け取る制度」と「相続人で分ける制度」の違い
  • 労災・特別遺族給付金・建設アスベスト給付金の受け取る人の順位
  • 国や会社への損害賠償は相続人で分けること
  • 兄弟でもめないための注意点

制度によって「受け取る人」の決まり方が違う

決まった順位のご遺族が1人で受け取る労災の遺族補償(年金・一時金)/特別遺族給付金/建設アスベスト給付金/石綿健康被害救済制度の特別遺族弔慰金など
相続人が、相続分に応じてそれぞれ受け取る国への損害賠償(アスベスト訴訟の和解)/会社への損害賠償

前者は、亡くなった方の生活を支えていたご遺族に対する補償という考え方なので、法律で順位が決まっていて、最も順位の高い方が代表して請求します。後者は、亡くなった方が持っていた「損害賠償を請求する権利」を相続人が引き継ぐものなので、相続人全員が相続分で分けます。

決まった順位で受け取る制度

労災の遺族補償、特別遺族給付金、建設アスベスト給付金は、次の順位で、最も順位の高いご遺族が請求します。

1配偶者(事実上の婚姻関係を含む)
2子
3父母
4孫
5祖父母
6兄弟姉妹

同じ順位の方が複数いる場合(子が3人など)は、そのうちの1人が代表して請求し、受け取った給付金をどう分けるかは、ご遺族の間の話し合いになります。

POINT 配偶者が生きていれば配偶者が受け取り、子は受け取れません。配偶者がいなければ子が受け取ります。子が複数いる場合は代表者が請求するため、兄弟の間で「誰が請求するか」「受け取ったお金をどうするか」を先に話し合っておくことが大切です。

労災の遺族年金については、「亡くなった方の収入で生活していた」ことなどの条件が加わり、子は年齢の制限もあります。詳しくは個別にご確認ください。

ご遺族の間での給付金の扱いも、あわせてご相談ください
誰が請求できるか、ほかのご遺族との関係をどう整理するかを含めて、進め方をお伝えします。

相続人で分ける制度

国に対する損害賠償(アスベスト訴訟の和解手続き)や、勤め先の会社に対する損害賠償は、亡くなった方の損害賠償請求権を相続人が引き継いで請求します。

  • 相続人全員が、法定相続分(配偶者2分の1・子2分の1など)に応じて請求できる
  • 請求するには、相続人全員の協力(委任)があるほうが進めやすい
  • 受け取ったお金は、相続財産として扱われるため、相続放棄をした方は受け取れない

兄弟でもめないために

  • 代表して請求する人と、受け取った後の分け方を、請求の前に話し合って書面にしておく
  • 請求の手続きや資料集めにかかった手間を、分け方に反映するかどうかも決めておく
  • 国や会社への損害賠償は、相続人全員で一緒に進めると、資料や主張を共有できて有利

給付金を受け取った後に「自分にも分けてほしい」と兄弟から言われて争いになることがあります。弁護士が間に入って、ご遺族全員の合意を整えることもできます。

税金について

労災の遺族補償や特別遺族給付金、建設アスベスト給付金は、原則として非課税とされています。国や会社からの損害賠償(慰謝料)も、原則として所得税はかかりません。相続との関係は、事案により扱いが異なるため、税理士にご確認ください。

よくある質問

Q. 母が生きているが、認知症で手続きができない

配偶者が請求する立場ですが、ご本人が手続きできない場合は、成年後見人を選任して請求することになります。子が代わりに請求することはできません。

Q. 相続放棄をしたが、給付金は受け取れる?

労災や給付金は相続財産ではなく、ご遺族固有の権利なので、相続放棄をしていても受け取れます。国や会社への損害賠償は相続財産なので、相続放棄をすると受け取れません。

Q. 内縁の妻だった

労災や給付金では、事実上の婚姻関係にあった方も配偶者として扱われます。戸籍上の配偶者がいる場合は、個別の判断になります。

まとめ

労災の遺族補償・特別遺族給付金・建設アスベスト給付金は、配偶者→子→父母の順で最も順位の高いご遺族が1人で請求し、同じ順位が複数いれば代表者が請求して話し合いで分けます。国や会社への損害賠償は相続人が相続分で分けます。請求の前に、誰が請求し、どう分けるかを決めておくと、ご遺族の間の争いを防げます。

誰が請求できるかの整理から、ご相談ください。

この記事の監修

弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

社会保険労務士試験合格。官公庁での勤務を経て弁護士に。
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