監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
「アスベスト(石綿)」という言葉は聞いたことがあっても、何なのか、どこに使われていたのか、吸うとどうなるのかは、意外と知られていません。昔、建設や工場の仕事をしていた方、古い建物の解体に関わった方、そのご家族にとって、アスベストは今も身近な問題です。この記事では、アスベストとは何か、どこに使われていたか、吸うとどんな病気になるのか、そして補償の入口までを、ひとまとめに解説します。
こんな疑問はありませんか?
- アスベストとは、そもそも何?
- いつごろ、どこに使われていた?
- 吸うと、どんな病気になる?
- 昔の仕事が心配。今から何ができる?
この記事でわかること
- アスベスト(石綿)の正体と、使われていた理由
- 使われていた時期と場所(建材・工場・自動車など)
- アスベストが原因の病気と、発症までの長い年月
- 心配な方が今できること(健康診断・補償)
アスベスト(石綿)とは
アスベストは、天然にできる細い繊維状の鉱物で、「石綿(せきめん・いしわた)」とも呼ばれます。熱や摩擦に強く、丈夫で、しかも安く、加工しやすかったため、「奇跡の鉱物」と呼ばれて、建材をはじめ、さまざまな工業製品に使われました。
問題は、繊維が髪の毛の5,000分の1ほどと非常に細く、空気中に舞ったものを吸い込むと、肺の奥まで入り込んで、体の中に長く残ることです。これが、何十年もたってから、がんなどの病気を引き起こします。
いつごろ、どこに使われていた?
日本では、1960年代から1980年代にかけて大量に輸入され、その7〜8割が建材として使われました。健康被害が明らかになるにつれて規制が強まり、2006年には原則として製造・使用が禁止され、2012年に全面禁止になっています。
| 建物の建材 | 鉄骨の耐火被覆の吹付け材、屋根や外壁のスレート、天井・壁のボード、床のタイル、配管の保温材など。古い建物(特に2006年以前に建てられたもの)には、今も残っている |
|---|---|
| 工場 | 石綿製品(建材、ブレーキ、パッキンなど)を作る工場。ボイラーや配管の断熱材 |
| 自動車・鉄道・船 | ブレーキやクラッチの摩擦材、エンジンまわりのパッキン、船の配管・機関室の断熱材 |
| その他 | 発電所・化学プラントの保温材、学校や公共施設の吹付け材 |
POINT アスベストは、今も古い建物の中に残っています。解体やリフォームの工事で壁や天井を壊すときに、繊維が舞って吸い込むおそれがあるため、解体業・リフォーム業の方は、今でも注意が必要です。
どんな仕事で吸いやすかったか
- 建設業:大工、内装、配管、電気、塗装、鉄骨、吹付け、解体など、現場で建材を切る・削る・はがす作業
- 造船・鉄道・自動車:断熱材や摩擦材を扱う作業
- 工場:石綿製品の製造、ボイラーや炉の保守
- 仕事以外:石綿工場の近くに住んでいた、家族の作業着を洗っていた
→ 職種ごとの詳しい解説は「解体工事・造船・自動車整備の仕事をしていた方へ|アスベストの被害と補償」
昔の仕事でアスベストを吸った心配がある方のご相談をお受けしています
職歴と症状を伺い、使える健康診断や補償の制度をお伝えします。
吸うと、どんな病気になる?
アスベストの病気の特徴は、吸ってから発症するまでに20〜40年という長い年月がかかることです。そのため、昔の仕事が原因で、退職してずいぶんたってから発症する方が多くいます。
| 中皮腫 | 胸や腹の膜にできるがん。アスベスト以外の原因ではほとんど起こらないため、アスベストの病気の代表 |
|---|---|
| 肺がん | たばこなどでも起こるが、アスベストを一定以上吸っていた場合は、アスベストが原因の肺がんとして補償の対象になる |
| 石綿肺(じん肺の一種) | 大量に吸った場合に、肺が硬くなって息切れが出る |
| びまん性胸膜肥厚 | 肺を包む膜が厚くなり、呼吸がしにくくなる |
| 良性石綿胸水 | 胸に水がたまる。良性だが、ほかの病気の前触れのこともある |
| 胸膜プラーク | 病気ではないが、アスベストを吸った「跡」。補償の認定で大切な所見になる |
→ 病気ごとの詳しい解説は「アスベストが原因の病気一覧|中皮腫・肺がん・石綿肺など病名と使える補償」
昔の仕事が心配な方が、今できること
- 退職後でも、アスベストを扱う仕事をしていた方は、国の制度で無料の健康診断を受けられることがある(石綿健康管理手帳)
- 健康診断で「胸膜プラーク」と言われたら、アスベストを吸った証拠になるので、職歴とあわせて記録しておく
- 中皮腫・肺がんなどと診断された場合は、労災、建設アスベスト給付金、石綿健康被害救済制度などの補償がある
- ご家族がアスベストの病気で亡くなった場合も、ご遺族が補償を受けられる
→ 補償の全体像は「アスベスト被害の補償|給付金・労災・救済制度の違い」
よくある質問
Q. 今住んでいる家にアスベストがあるかもしれない。危険?
建材の中に固められている状態なら、通常の生活で繊維が舞うことはほとんどありません。壊したり削ったりするときに注意が必要です。
Q. 1回吸っただけでも病気になる?
吸った量が多いほど危険性は高まりますが、少量でも中皮腫になった例はあります。心配な方は、職歴を記録し、健康診断を受けておくことをおすすめします。
Q. アスベストの病気は治る?
病気によります。早く見つけるほど治療の選択肢が広がるため、昔の仕事が心配な方は、定期的な検査が大切です。
まとめ
アスベストは、熱や摩擦に強い天然の繊維状鉱物で、1960〜80年代に建材を中心に大量に使われ、2006年に原則禁止されました。吸い込むと20〜40年後に、中皮腫・肺がん・石綿肺などの病気を引き起こします。古い建物には今も残っており、解体などの作業では注意が必要です。
昔の仕事が心配な方、診断を受けた方、ご家族を亡くされた方は、お気軽にご相談ください。