相手に借金がある|婚姻費用は減る?

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

夫に多額の借金があり、「毎月の返済があるから、婚姻費用はこれだけしか払えない」と言われている。借金を理由に、生活費を減らされてしまうのだろうか。逆に、支払う側の立場で、「借金の返済で手元にお金が残らないのに、算定表どおりに払えない」という相談もあります。この記事では、借金が婚姻費用や養育費の計算でどのように扱われるかを解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 相手の借金の返済は、婚姻費用の計算で考慮される?
  • 生活費のために借りた借金なら違う?
  • 支払う側は、借金があっても算定表どおり払う必要がある?
  • 相手が自己破産したら、婚姻費用はどうなる?

この記事でわかること

  • 借金が原則として考慮されない理由
  • 例外的に考慮される借金
  • 支払う側の対応
  • 自己破産と婚姻費用・養育費の関係

借金は原則として考慮されない

婚姻費用や養育費は、夫婦や親子の間の生活を支える義務(生活保持義務)にもとづくもので、自分と同じ水準の生活を相手にも保障すべきものとされています。借金の返済は、この義務より優先されるものではないため、家庭裁判所の実務では、義務者に借金があっても、算定表の計算で収入から差し引くことは原則としてしません。

つまり、「借金の返済があるから払えない」という主張は、それだけでは認められません。

例外的に考慮される借金

ただし、次のような借金は、事情によって考慮されることがあります。

考慮されることがある夫婦の生活費や子どもの教育費のために借りたもの(住宅ローン、教育ローンなど)/権利者も同意して夫婦で負担する前提だったもの
考慮されにくい義務者のギャンブルや浪費による借金/義務者が個人的な事業のために借りたもの/別居後に義務者が自分のために借りたもの

考慮される場合も、返済額の全額が差し引かれるわけではなく、月々の金額や家計への影響を見て、一定の範囲で調整されるのが一般的です。

POINT 借金が「誰のため・何のための借金か」が分かれ目です。生活費のための借金であることを示す資料(契約書、使い道がわかる通帳など)があるかどうかで、結論が変わります。

借金のある相手との婚姻費用・養育費のご相談をお受けしています
借金の内容と収入を伺い、婚姻費用の計算で考慮されるかどうかの見通しをお伝えします。

支払う側の方へ

借金で手元にお金が残らない場合でも、婚姻費用や養育費の支払いを止めると、未払い分が積み重なり、給料の差押えを受けることになります。借金の整理(任意整理・個人再生など)を検討して、婚姻費用や養育費を払える家計にすることも一つの方法です。

個人再生や自己破産をしても、養育費や婚姻費用の支払義務はなくならず、未払い分も免除されません。

相手が自己破産した場合

相手が自己破産しても、婚姻費用や養育費は免責の対象外で、支払義務は続きます。未払いになっている分も、引き続き請求でき、給料の差押えもできます。

よくある質問

Q. 相手の借金を、自分も返さないといけない?

相手名義の借金を、配偶者というだけで返す義務はありません。ただし、連帯保証人になっている場合は別です。

Q. 借金のことを隠されていた

相手の借金は、婚姻費用の計算では原則として考慮されないため、知らなくても婚姻費用の金額には影響しません。財産分与では、借金の内容によって扱いが変わります。

Q. 権利者(受け取る側)に借金がある場合は?

同じく、原則として考慮されません。

まとめ

婚姻費用や養育費の計算では、義務者の借金は原則として考慮されず、「返済があるから払えない」という主張は通りません。ただ、夫婦の生活費や子どもの教育のための借金は、一定の範囲で考慮されることがあります。自己破産しても、婚姻費用・養育費の支払義務はなくなりません。

借金の内容によって扱いが変わるため、資料を持ってご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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