監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
結婚してからずっと専業主婦(主夫)で、収入はない。それなのに、相手から「働こうと思えば働けるのだから、収入があるものとして計算すべきだ」と言われた。婚姻費用や養育費の計算では、実際には収入がなくても、「働けるのに働いていない」とみられると、一定の収入があるものとして扱われることがあります。これを「潜在的稼働能力」といいます。この記事では、どのような場合に収入があるとみなされ、いくらとされるのかを解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 収入がゼロなのに、収入があるものとして計算される?
- みなされる場合、いくらの収入とされる?
- 小さな子どもがいる場合はどうなる?
- 病気で働けない場合は?
この記事でわかること
- 潜在的稼働能力の考え方
- 収入があるとみなされやすい場合・みなされにくい場合
- みなされる場合の金額の目安
- 働けない事情の伝え方
潜在的稼働能力とは
婚姻費用や養育費は、双方の収入をもとに計算します。ただ、実際の収入がなくても、健康で働くことに支障がなく、働いていないことに合理的な理由がない場合には、「働けば得られるはずの収入」があるものとして計算されることがあります。これが潜在的稼働能力の考え方です。
みなされやすい場合・みなされにくい場合
| 収入があるとみなされやすい | 子どもが小学校高学年以上で手がかからない/健康で、年齢も働ける範囲/別居前にパートなどで働いていた/働かない理由が「働きたくない」だけ |
|---|---|
| みなされにくい | 乳幼児や、病気・障害のある子どもを育てている/本人が病気やけがで働けない/別居直後で就職活動中/高齢で就職が難しい |
婚姻費用・養育費の計算でお困りの方のご相談をお受けしています
ご自身の事情(お子さんの年齢、健康状態、職歴など)を伺い、どのように主張するのがよいかをお伝えします。
みなされる場合の金額の目安
収入があるとみなされる場合、多くはパートタイムで働いた場合の収入が基準になります。家庭裁判所の実務では、年間100万円から120万円程度(月8万円から10万円程度)を収入とみなす例が多くみられます。
一方、専門的な資格や職歴があり、フルタイムで働けるとみられる場合は、統計上の平均賃金(賃金センサス)をもとに、より高い収入が認定されることもあります。
POINT 「働けるかどうか」は、子どもの年齢、健康状態、職歴、これまでの働き方など、具体的な事情で判断されます。働けない事情があるなら、それを資料で示すことが大切です。
働けない事情の伝え方
- 病気やけがで働けない場合は、診断書を用意する
- 子どもの保育園や学童の状況(入れない、送迎が必要など)を説明する
- 就職活動をしている場合は、応募の記録を残しておく
- 別居前の家計の分担(相手の希望で専業主婦になった経緯など)を整理する
逆の立場の方へ
支払う側で、相手が働けるのに働いていないと考える場合は、相手の年齢や職歴、子どもの状況をもとに、潜在的稼働能力を主張することができます。相手の資格や以前の勤務先などの情報があれば、整理しておきましょう。
よくある質問
Q. 子どもが3歳。働けると言われた
乳幼児を育てている場合は、収入がないものとして扱われることが多いです。保育園の状況なども含めて説明しましょう。
Q. パートで月5万円稼いでいる。それ以上働けと言われた
実際の収入をもとに計算するのが基本です。もっと働けるはずだという主張が通るかは、事情によります。
Q. 離婚後の養育費でも同じ?
同じ考え方が使われます。離婚後は、監護する親も働くことが期待される度合いが高くなる傾向があります。
まとめ
専業主婦(主夫)で収入がなくても、健康で働ける状況なら、パート程度の収入(年100万〜120万円程度)があるものとして婚姻費用・養育費が計算されることがあります。乳幼児を育てている、病気で働けないなどの事情があれば、収入はないものとして扱われます。
ご自身の事情をきちんと伝えることで、結果が大きく変わります。計算の前に、弁護士にご相談ください。