公正証書があれば裁判なしで差押えできる?

監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

お金を貸したときや、離婚のときに養育費を決めたときに、公証役場で公正証書を作った。相手が約束どおり払ってくれないので、差押えをしたいけれど、裁判をしないといけないのだろうか。結論から言うと、一定の条件を満たした公正証書があれば、裁判をしなくても、その公正証書をもとに差押え(強制執行)ができます。この記事では、その条件の確認のしかたと、公正証書から差押えまでの流れを解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 公正証書があれば、裁判なしで差し押さえられる?
  • どんな公正証書なら、差押えに使える?
  • 公正証書を作っただけで、すぐに差押えができる?
  • 公正証書がない場合は、どうすればいい?

この記事でわかること

  • 公正証書で差押えができる条件
  • お手元の公正証書の確認のしかた
  • 差押えまでに必要な準備(執行文・送達証明)
  • 公正証書で差し押さえられないもの

公正証書で差押えができる条件

公正証書をもとに強制執行をするには、次の2つの条件が必要です。

  • お金の支払いを内容とするものであること(金銭債権)
  • 「支払わないときは、直ちに強制執行を受けても異議はない」という文言(強制執行認諾文言)が入っていること

この2つを満たす公正証書は「執行証書」と呼ばれ、判決と同じように、強制執行の根拠(債務名義)になります。そのため、改めて裁判を起こす必要はありません。

お手元の公正証書の確認のしかた

公正証書の本文を読み、次の点を確認してください。

  • 「強制執行認諾」「強制執行を受けることを認諾する」などの条項があるか
  • 支払う金額と支払いの時期(毎月○日に○円、など)がはっきり書かれているか
  • 養育費や婚姻費用の場合、いつからいつまで支払うかが書かれているか

POINT 金額や支払いの時期がはっきりしていない部分については、公正証書があっても差押えができないことがあります。確認が難しいときは、公正証書の写しをお持ちいただければ、弁護士が確認します。

公正証書をお持ちの方のご相談をお受けしています
公正証書の写しをお持ちいただければ、そのまま差押えに使えるか、どの財産を差し押さえるのがよいかをお伝えします。

差押えまでに必要な準備

公正証書をもとに差押えを申し立てるには、公正証書そのもののほかに、公証役場で次の書類を用意します。

執行文「この公正証書で強制執行ができる」ことを公証人が証明する文言。公正証書を作った公証役場に申請します
送達証明書公正証書の謄本が相手に送られたことの証明。相手に送達されていない場合は、公証役場から送達してもらう手続きをします

これらがそろえば、相手の預金や給料などを差し押さえる申立てを、裁判所に行うことができます。相手の財産がわからない場合は、財産を調べる手続きとあわせて進めます。

公正証書で差し押さえられないもの

公正証書で強制執行ができるのは、お金の支払いに関する部分だけです。次のようなものは、公正証書があっても、強制執行をするには裁判(または調停)が必要です。

  • 建物や土地の明渡し
  • 物の引渡し
  • 面会交流の約束など、お金の支払いではない約束

養育費の公正証書の場合

養育費や婚姻費用の公正証書は、ほかの債権と比べて、差押えで有利に扱われます。

  • 給料を差し押さえられる範囲が、手取り額の2分の1まで(通常は4分の1まで)
  • 支払いが遅れた分だけでなく、将来の分もまとめて差押えを申し立てられる
  • 相手の勤務先がわからないときに、裁判所を通じて市区町村などから勤務先の情報を取得できる

公正証書がない場合

口約束や、当事者だけで作った念書・合意書では、強制執行はできません。この場合は、支払督促や訴訟などの裁判所の手続きで、判決などの債務名義を取ってから差押えに進みます。相手が支払いを約束しているなら、今からでも公正証書を作っておくと、万一のときに裁判なしで差押えができます。

よくある質問

Q. 公正証書をなくした

公正証書の原本は公証役場に保管されています。作った公証役場で、謄本を再発行してもらえます。

Q. 相手が公正証書の内容に文句を言っている

相手が内容に不服でも、強制執行認諾文言のある公正証書があれば、差押えの申立てはできます。相手が争うには、相手の側から裁判(請求異議の訴え)を起こす必要があります。

Q. 公正証書の作成から時間がたっている

公正証書に書かれた債権には時効があります。支払いの時期から長く時間がたっている場合は、早めにご相談ください。

まとめ

お金の支払いを内容とし、強制執行認諾文言が入っている公正証書があれば、裁判をしなくても差押えができます。公証役場で執行文と送達証明書を用意すれば、相手の預金や給料などの差押えを裁判所に申し立てられます。

お手元の公正証書がそのまま使えるかどうかは、弁護士が確認します。写しをお持ちのうえ、ご相談ください。

この記事の監修

弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

青山学院大学法学部卒業。
弁護士紹介を見る →