監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
相手は定年まであと数年で、まとまった退職金が出る予定だ。離婚しても、退職金は分けてもらえるのだろうか。会社の確定拠出年金(企業型DC)やiDeCoはどうなるのか。退職金や年金のように、将来受け取るお金が財産分与の対象になるかは、離婚のときによく争いになります。この記事では、退職金と確定拠出年金の扱いと、計算の考え方を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- まだ受け取っていない退職金も、財産分与の対象になる?
- 対象になるなら、いくら分けてもらえる?
- 確定拠出年金やiDeCoはどう扱われる?
- 年金分割とは別に請求できる?
この記事でわかること
- すでに受け取った退職金・将来の退職金の扱い
- 将来の退職金の計算のしかた
- 確定拠出年金・iDeCoの扱い
- 年金分割との違い
すでに受け取った退職金
離婚(別居)の前に受け取った退職金は、預金などの形で残っている限り、結婚している間に働いた期間に対応する部分が財産分与の対象になります。使ってしまった分は原則として対象になりませんが、使い道によっては考慮されることがあります。
将来受け取る退職金
まだ受け取っていない退職金は、支給されるかどうかが確実でないため、無条件には対象になりません。ただ、実務では、次のような場合には対象になるとされています。
- 退職までの期間が比較的短い(おおむね数年以内が目安ですが、10年程度先でも認められた例があります)
- 勤務先の経営が安定していて、退職金規程がはっきりしている(公務員や大企業など)
計算のしかた
対象になる場合は、「別居の時点で自己都合退職したと仮定した場合の退職金の額」を基準に、そのうち結婚してから別居までの期間に対応する部分を分ける方法が一般的です。
例えば、別居時に自己都合退職した場合の退職金が1,000万円で、勤続25年のうち結婚期間が20年なら、1,000万円×20/25=800万円が対象となり、その2分の1(400万円)が分与の目安になります。
結婚する前に働いていた期間に対応する部分は、夫婦の協力とは関係がないため特有財産で、別居した後に働いた期間に対応する部分も、財産分与の対象にはなりません。
POINT 将来の退職金は、支払いの時期を「実際に退職金を受け取ったとき」とする、あるいは分割払いにするなど、支払う側の負担を考えた条件で合意することもあります。
退職金・年金を含む財産分与のご相談をお受けしています
相手の勤続年数や退職金規程をもとに、財産分与で請求できる金額の見通しをお伝えします。
確定拠出年金・iDeCo
企業型の確定拠出年金やiDeCo(個人型)は、60歳まで引き出せないものの、本人名義の資産として残高が把握できるため、結婚期間中に積み立てた部分は財産分与の対象になるのが一般的です。別居時点の残高のうち、結婚期間に対応する部分を分ける形で計算します。
実際に引き出せるのは将来なので、現金で清算するか、ほかの財産で調整するかを話し合います。
年金分割との違い
厚生年金については、財産分与とは別に「年金分割」という制度があり、結婚期間中の保険料の納付記録を分けます。年金分割は、離婚後5年以内(2026年3月31日以前の離婚は2年以内)に請求する必要があります。退職金や確定拠出年金は年金分割の対象ではないため、財産分与の中で別に請求します。
資料の集め方
- 相手の勤務先の退職金規程(就業規則の一部として確認できることが多い)
- 勤続年数がわかる資料
- 確定拠出年金の残高通知書やウェブの画面
- ねんきん定期便(年金分割の見通しのため)
相手が資料を出さない場合は、調停や審判の中で、裁判所から勤務先に調査嘱託を求めることができます。
よくある質問
Q. 相手が退職金を「ない」と言っている
就業規則や退職金規程で確認できます。調停の中で、勤務先への調査嘱託を求めることもできます。
Q. 自分の退職金も分けないといけない?
同じ考え方で、ご自身の退職金も対象になります。双方の財産を合わせて清算します。
Q. 離婚後に相手が退職金を受け取った
離婚のときに退職金を財産分与の対象にする合意や判断がなければ、あとから請求するのは難しくなります。離婚のときに決めておくことが大切です。
まとめ
退職金は、すでに受け取ったものは残っている範囲で、将来のものは退職が比較的近く支給が確実なら、結婚期間に対応する部分が財産分与の対象になります。確定拠出年金やiDeCoも、結婚期間中に積み立てた残高が対象です。厚生年金は別に年金分割の手続きが必要です。
退職金や年金は金額が大きく、離婚のときに決めておかないとあとから請求しにくい財産です。早めにご相談ください。