監修:弁護士 齊藤 翔平(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
被害者に謝りたいのに、示談を断られてしまった。薬物や交通違反のように、そもそも被害者がいない事件で、反省をどう形にすればいいかわからない。このようなときに使われるのが「贖罪寄付(しょくざいきふ)」です。弁護士会などに寄付をして、その証明書を検察官や裁判所に提出し、反省の気持ちを形として示す方法です。この記事では、贖罪寄付の仕組みと効果、金額の目安、手続きの流れを解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 贖罪寄付をすると、不起訴になる?
- どんな事件で使う?示談との違いは?
- いくら寄付すればいい?
- どこに、どうやって寄付する?
この記事でわかること
- 贖罪寄付とは何か、寄付先と寄付金の使われ方
- 贖罪寄付が役に立つ事件・役に立たない事件
- 金額の目安と、決め方
- 手続きの流れ(図解)と注意点
贖罪寄付とは
贖罪寄付とは、罪を犯してしまった方が、反省と償いの気持ちを形にするために、弁護士会や公益団体などにお金を寄付することです。寄付先から発行される証明書を、検察官や裁判所に提出し、反省していることを示す資料(情状)として使います。
| 主な寄付先 | 日本弁護士連合会(日弁連)・各地の弁護士会(埼玉弁護士会など)のほか、犯罪被害者支援団体、更生保護施設、薬物依存からの回復を支援する団体など |
|---|---|
| 寄付金の使われ方 | 弁護士会への寄付は「法律援助事業」に使われ、犯罪被害者や子ども、難民など、弁護士の助けを必要とする方の支援に充てられる |
| 証明書 | 弁護士会に寄付すると、「贖罪寄付を受けたことの証明書」がその場で発行される |
お金は被害者に渡るのではなく、社会のために使われます。そのため、贖罪寄付は「被害者への償い」そのものではなく、「社会に対する償いの気持ちを形にしたもの」と位置づけられています。
どんな事件で役に立つか
| 役に立ちやすい事件 | 被害者がいない事件(薬物、交通違反、公然わいせつなど)/被害者が示談を拒否している事件/被害者の連絡先がわからず示談ができない事件/被害弁償は済んだが、慰謝料の上乗せを断られた事件 |
|---|---|
| 示談を優先すべき事件 | 被害者がいる事件(暴行・傷害、痴漢、盗撮、窃盗、詐欺など)で、示談ができる見込みがある場合。贖罪寄付は示談の代わりにはならない |
POINT 被害者がいる事件では、まず示談を目指すのが基本です。贖罪寄付は、示談ができない事情があるときの「次の手」と考えてください。示談ができる事件で、示談をせずに贖罪寄付だけをしても、「被害者に向き合っていない」と見られるおそれがあります。
→ 示談の進め方は「埼玉で被害者と示談したい方へ|示談の進め方と流れ」
示談を断られた方、被害者のいない事件で反省を示したい方のご相談をお受けしています
事件の内容に合わせて、贖罪寄付の要否・金額・寄付先を一緒に考えます。
贖罪寄付の効果
贖罪寄付は、反省の気持ちを行動で示すものとして、検察官が起訴するかどうかを決めるときや、裁判所が刑を決めるときに、有利な事情(情状)として考慮されます。日弁連が寄付を紹介した弁護士に行ったアンケートでは、約8割が「情状として考慮された」と回答しています。
ただし、贖罪寄付をすれば必ず不起訴になる、刑が軽くなる、というものではありません。事件の重さ、前科の有無、本人の反省の態度、再発防止の取り組みなどとあわせて、総合的に判断されます。
- 反省の気持ちや、再発防止の取り組み(治療、環境の改善など)と一緒に示すことで、効果が高まる
- 形だけの寄付は、かえって印象を悪くすることもある
- 起訴されるかどうかの判断の前、または判決の前に提出する必要がある
金額の目安
贖罪寄付の金額に決まりはなく、事件の内容と、ご本人の収入・資産に応じて決めます。
| 考え方の目安 | 示談ができていれば払ったであろう金額、あるいは罰金になった場合の罰金額を一つの目安にして、ご本人が無理なく払える範囲で決めることが多い |
|---|---|
| 一般的な範囲 | 数万円から数十万円程度。事件が重い場合や、資力がある場合は、それ以上になることもある |
| 注意 | 金額が大きければよいわけではない。収入に見合わない金額は、反省の表れとは見られにくい |
具体的な金額は、事件の内容と検察官の判断の見通しをふまえて、弁護士と相談して決めるのが確実です。
手続きの流れ
弁護士会への贖罪寄付は、所定の申込書に、寄付する人の住所・氏名、事件の内容、寄付の趣旨と金額、弁護士の氏名などを書いて、弁護士を通じて申し込みます。弁護士会に寄付した場合、証明書はその場で発行されるので、急ぐ場合にも間に合いやすいのが特徴です。
ほかの団体に寄付する場合は、証明書の発行に時間がかかることがあるので、事前に確認しておきます。
贖罪寄付をするときの注意点
- 寄付したお金は返ってこない。不起訴にならなかったからといって、取り戻すことはできない
- 寄付先は、事件の内容と関係のあるところ(薬物事件なら薬物依存の回復支援団体など)を選ぶと、反省の気持ちが伝わりやすい
- 贖罪寄付だけでなく、反省文、家族の監督の誓約、治療や通院など、ほかの取り組みとあわせて示す
- 弁護士に依頼している場合は、必ず弁護士を通じて行う(弁護士会への寄付は、受任弁護士を通じて申し込む仕組み)
よくある質問
Q. 贖罪寄付をすれば、不起訴になりますか?
必ず不起訴になるものではありません。反省を示す事情の一つとして考慮されますが、事件の重さや前科の有無などとあわせて総合的に判断されます。
Q. 弁護士に頼まずに、自分で寄付することはできますか?
団体によっては個人からの寄付も受け付けていますが、弁護士会への贖罪寄付は、受任している弁護士を通じて申し込む仕組みです。証明書の取得や提出のタイミングも含めて、弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 贖罪寄付は、税金の控除の対象になりますか?
寄付先の団体によって扱いが異なります。弁護士会への贖罪寄付は、一般的には寄付金控除の対象にはなりません。詳しくは税理士にご確認ください。
Q. 家族が代わりに寄付してもよいですか?
寄付する人がご本人と異なる場合は、申込書にその関係を書きます。ただし、ご本人の反省を示す趣旨なので、ご本人の意思で行うことが大切です。
まとめ
贖罪寄付は、反省と償いの気持ちを形にするために、弁護士会などに寄付をし、その証明書を検察官や裁判所に提出する方法です。被害者がいない事件や、示談を断られた事件で役に立ちますが、示談の代わりにはならず、必ず不起訴になるものでもありません。金額は事件の内容と資力に応じて決め、反省文や再発防止の取り組みとあわせて示すことが大切です。
贖罪寄付をしたほうがよいか、いくらにするかは、事件の内容によって変わります。お気軽にご相談ください。