建設アスベストで国の責任|認められた理由と期間

監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

建設現場で働いていて、中皮腫や肺がんになった。国から給付金が支払われると聞いたけれど、現場で建材を使っていたのは自分や会社なのに、どうして国が払うのだろう。建設現場で働いていた方の被害については、「建設アスベスト訴訟」で最高裁判所が国の責任を認め、それをもとに「建設アスベスト給付金」の制度ができました。この記事では、なぜ国に責任があるとされたのか、どの時期の作業が対象なのかを、できるだけやさしく説明します。

こんな疑問はありませんか?

  • 建材を使っていたのは現場なのに、なぜ国の責任?
  • どの時期に建設現場で働いていた人が対象?
  • 一人親方も対象になるのはなぜ?
  • 建材メーカーにも責任があると聞いたが?

この記事でわかること

  • 「規制する権限を使わなかった」ことが違法とされる考え方
  • 建設アスベスト訴訟で国の責任が認められた理由
  • 国の責任が認められる期間(1972年10月〜2004年9月)と割合
  • 一人親方も対象になった理由と、建材メーカーの責任

なぜ国に責任があるのか

国は、働く人の健康を守るために、危険な物質の使い方を規制する権限を持っています。アスベストを含む建材を切る・削る作業で粉じんが舞い、吸い込むと病気になることは、早い時期から知られていました。

最高裁判所は、「国が、アスベストの危険性を知ることができたのに、働く人を守るための規制を行わなかったことは、権限の使い方として著しく合理性を欠き、違法である」と判断しました。これを「規制権限の不行使」といいます。

POINT 国が直接建材を使ったわけではありませんが、「止められる立場にあったのに止めなかった」ことが、国の責任の根拠です。そのため、国の責任が認められるのは、「規制すべきだったのにしなかった期間」に限られます。

建設アスベスト訴訟(最高裁2021年5月17日)

大工、内装工、配管工、電気工など、建設現場で働いていた方やご遺族が、全国で国と建材メーカーを訴えた裁判です。最高裁判所は、国と建材メーカーの両方の責任を認めました。

国が怠ったこと建材にアスベストが含まれていることと、その危険性を表示させること/現場で防じんマスクの着用を義務付けること/作業者への安全教育を行わせること などを、できたはずの時期に行わなかった
責任が認められた期間石綿の吹付け作業:1972年10月1日〜1975年9月30日/屋内の作業場での作業:1975年10月1日〜2004年9月30日
国の責任の割合損害の3分の1
対象の病気中皮腫、肺がん、石綿肺(じん肺管理区分2以上)、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水

屋外の作業(屋根の上での作業など)は、粉じんがたまりにくいとして、国の責任は認められていません。

建設現場で働いていた方・ご遺族のご相談をお受けしています
働いていた時期と作業の内容を伺い、建設アスベスト給付金の対象になるかをお伝えします。

一人親方も対象になった理由

国の規制の根拠になった法律(労働安全衛生法)は、本来は会社に雇われている労働者を守るための法律です。しかし最高裁判所は、この法律の規制は、労働者だけでなく、同じ現場で同じように作業をしている一人親方や中小の事業主も守るためのものだと判断し、一人親方などに対する国の責任も認めました。

建材メーカーの責任

最高裁判所は、アスベストを含む建材を作っていたメーカーについても、建材に危険性の表示をしなかったことについて責任を認めました。どのメーカーの建材が現場で使われたかを一つ一つ証明するのは難しいため、現場でよく使われていた建材のメーカーが、共同で責任を負うという考え方が取られています。

メーカーへの損害賠償は、国の給付金とは別に、裁判で請求することになります。

裁判を経なくても受け取れる「建設アスベスト給付金」

最高裁判決を受けて、2022年に、裁判を起こさなくても国から給付金を受け取れる「建設アスベスト給付金」の制度ができました。上の期間に建設現場で作業をしていて、対象の病気になった方(亡くなった場合はご遺族)が、労働者健康安全機構に請求します。

金額病気の重さによって550万円〜1,300万円(中皮腫・肺がんなどは1,150万円、それらで亡くなった場合は1,300万円)
期限診断日または死亡日の遅いほうから20年以内

よくある質問

Q. 2004年10月以降に建設現場でアスベストを吸った

国の責任の期間からは外れますが、労災の対象にはなります。また、勤め先の会社に対する損害賠償を検討できる場合があります。

Q. 国の責任が3分の1なら、残りは誰が払う?

建材メーカーの責任が認められており、メーカーに対する損害賠償を別に請求できる場合があります。勤め先の会社への請求も検討します。

Q. 工場でも働いていた

工場で働いていた期間については、工場型の国との和解の対象になることがあります。別の記事で解説しています。

まとめ

建設現場で働いていた方の被害について、最高裁判所は、国が1972年10月〜2004年9月(吹付けは1975年9月まで)に、建材への警告表示や防じんマスクの着用の義務付けなどをしなかったこと(規制権限の不行使)を違法とし、損害の3分の1の責任を認めました。一人親方も対象で、建材メーカーの責任も認められています。この判決をもとに、裁判なしで受け取れる建設アスベスト給付金の制度ができました。

働いていた時期が当てはまるかどうか、お気軽にご相談ください。

この記事の監修

弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

社会保険労務士試験合格。官公庁での勤務を経て弁護士に。
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