孫や子の配偶者への贈与|特別受益になる?

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

父は生前、兄の子(孫)の学費を全額出し、兄の妻にも高価な贈り物をしていた。兄本人には贈与していないが、実質的には兄の家族への贈与だ。これは、遺産分割で兄の特別受益として考慮してもらえないのだろうか。特別受益は、相続人本人が受けた贈与が対象なので、孫や子の配偶者への贈与は、原則として特別受益になりません。ただし、実質的に相続人への贈与とみられる場合は例外です。この記事では、その考え方と、認められる場合・認められない場合を解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 孫への贈与は、その親(相続人)の特別受益になる?
  • 相続人の配偶者への贈与は?
  • 実質的に相続人への贈与といえるのは、どんな場合?
  • 孫が養子になっている場合は?

この記事でわかること

  • 特別受益は相続人本人への贈与が対象であること
  • 孫や相続人の配偶者への贈与が、例外的に特別受益とされる場合
  • 孫が養子(相続人)になっている場合
  • 主張するときの資料

特別受益は相続人本人への贈与が対象

特別受益は、相続人が亡くなった方から受けた贈与を、遺産の前渡しとして計算に入れる制度です。そのため、相続人でない孫や、相続人の配偶者が受けた贈与は、原則として特別受益にはなりません。

例えば、祖父が孫の入学祝いを渡した、孫名義の口座に毎年贈与していた、といった場合、その孫の親(相続人)の特別受益にはならないのが原則です。

例外:実質的に相続人への贈与とみられる場合

家庭裁判所の実務では、形式上は孫や配偶者への贈与でも、実質的には相続人本人への贈与と同じと評価できる場合には、相続人の特別受益として扱うことがあります。

特別受益とされることがある孫の学費や生活費を長期間負担していて、本来その親(相続人)が負担すべきものを肩代わりしていた/相続人の家族の生活費として、まとまった額を継続的に渡していた/贈与の名義は孫でも、実際には相続人が自由に使っていた
特別受益とされにくい社会通念上相当な範囲の入学祝い・お年玉/祖父母が孫自身のために積み立て、孫が管理している預金/相続人の配偶者への、通常の範囲の贈り物

POINT ポイントは、「その贈与によって、相続人本人が経済的な利益を受けたといえるか」です。孫の学費を祖父が出したことで、相続人が本来の負担を免れていれば、実質的に相続人への贈与と評価される余地があります。

孫や相続人の家族への贈与でお悩みの方のご相談をお受けしています
贈与の内容と経緯を伺い、特別受益として主張できるかの見通しをお伝えします。

孫が養子になっている場合

孫が亡くなった方の養子になっている場合、その孫は相続人なので、孫自身が受けた贈与は、孫の特別受益として扱われます。この場合も、養子縁組の前に受けた贈与が特別受益になるかは、判断が分かれることがあります。

孫養子は、相続税の対策として行われることがありますが、遺産分割では、孫養子の取り分と、その親の取り分の両方が問題になり、争いになりやすい点に注意が必要です。

主張するときの資料

  • 亡くなった方の通帳の出金記録と、孫や配偶者の口座への入金記録
  • 学費の納付書や、贈与の使い道がわかる資料
  • 贈与の経緯がわかるやりとり(「兄の家計を助けるため」などの記載)
  • 贈与の時期・金額・回数の一覧

孫や配偶者への贈与を特別受益として主張するのは、相続人本人への贈与より認められにくいため、「相続人本人が利益を受けた」ことを示す資料を丁寧にそろえることが大切です。

よくある質問

Q. 孫名義の口座に、祖父が毎年110万円ずつ贈与していた

孫自身の財産として管理されていれば、原則として親(相続人)の特別受益にはなりません。実際に親が使っていた場合は、問題になることがあります。

Q. 逆に、自分の子(孫)が受けた贈与を、兄弟から特別受益だと言われた

社会通念上相当な範囲であれば、特別受益にはならないと反論できます。贈与が孫自身のためのものであったことを示します。

Q. 相続人の配偶者が亡くなった親の介護をしていた

贈与ではなく貢献の話ですが、相続人でない配偶者の介護は、特別寄与料の制度で請求を検討します。

まとめ

孫や相続人の配偶者への贈与は、原則として相続人の特別受益にはなりませんが、孫の学費の長期負担など、実質的に相続人本人が利益を受けたといえる場合は、特別受益として扱われることがあります。孫が養子なら、孫自身の特別受益になります。

贈与の内容と資料を持って、主張できるかどうかをご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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