別居後に払った住宅ローン|財産分与でどうなる?

監修:弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

別居してから2年、家を出た夫が、妻と子どもが住む自宅の住宅ローンを払い続けている。離婚のとき、夫は「別居後に自分が払った分は、財産分与で考慮してほしい」と言い、妻は「ローンは夫の名義なのだから、払うのは当然だ」と言う。別居後に払った住宅ローンが財産分与でどう扱われるかは、どちらの立場からもよく問題になります。この記事では、基本の考え方と、婚姻費用との関係、立場ごとに気をつけたい点を、図を使って解説します。

こんな疑問はありませんか?

  • 別居後に払った住宅ローンは、財産分与で考慮される?
  • 家に住んでいる側は、ローンの分を請求される?
  • 婚姻費用でローンの分が引かれていた場合は?
  • オーバーローンの家の場合は?

この記事でわかること

  • 別居後に払った住宅ローンの基本の考え方(図解)
  • 払った側・家に住んでいる側それぞれの立場での見方
  • 婚姻費用との関係(二重に考慮しないための整理)
  • オーバーローンの場合と、計算が変わる事情

基本の考え方:別居時のローン残高で計算する

財産分与の対象は、原則として別居した時点の財産です。そのため、住宅ローンのある家は、家の価値から「別居時のローン残高」を差し引いて、分与の対象額を計算する考え方が一般的です。

別居後に名義人が払ったローンは、別居後の自分の収入から払ったものなので、その返済で減ったローンの分(=増えた家の価値の分)は、払った人が取得するものとして、相手と分ける対象には含めない、という整理になります。

別居後に払ったローンの扱い(考え方の一例)家の価値3,000万円別居時のローン残高2,000万円別居後に夫が返済200万円離婚時のローン残高1,800万円別居時の残高で計算3,000 − 2,000 = 1,000万円→ 各500万円別居後の返済で増えた200万円分は、夫が取得※ 婚姻費用での調整など、事案によって計算は変わります
図 別居後に払った住宅ローンの扱い

図の例では、家の価値3,000万円から別居時のローン残高2,000万円を引いた1,000万円が分与の対象で、各500万円になります。別居後に夫が返済した200万円で増えた家の価値の分は、夫が取得するものとして、分与の対象から外れます。

POINT 別居時と離婚時のどちらのローン残高で計算するかで、分与の額が変わります。別居時点のローン残高がわかる資料(残高証明書や返済予定表)を、必ず確保しておきましょう。

ローンを払っている側の方へ

別居後もローンを払い続けている場合は、その返済分を相手と分ける必要はない、と主張できます。そのために、次の資料を用意しておきます。

  • 別居時点のローン残高がわかる資料
  • 別居後の返済の記録(通帳の引落し)
  • 別居の時期がわかる資料

ただし、ローンの返済が婚姻費用の中で考慮されていた場合は、次の項目のように、整理が必要になります。

住宅ローンのある家の財産分与のご相談をお受けしています
別居時と現在のローン残高、婚姻費用の取り決めを伺い、分与の見通しを計算してお伝えします。

婚姻費用との関係

別居後、相手と子どもが住む家のローンを払っている場合、婚姻費用の計算で、相手の住居費の分を差し引く調整がされていることがあります。

このように婚姻費用で住居費として調整されている場合は、その部分は相手の生活費として扱われているため、財産分与で改めて「自分が払った分」として考慮すると、二重に考慮することになりかねません。婚姻費用でどのように取り決めたかを確認して、財産分与での扱いを整理します。

家に住んでいる側の方へ

相手が別居後に払ったローンについて、家に住んでいる側が、その分を相手に支払わなければならないわけではありません。別居時のローン残高で計算する考え方であれば、別居後の返済分は、そもそも分与の対象に含まれないからです。

一方、離婚時のローン残高で計算した場合は、別居後の返済で増えた家の価値の分を、相手が多く受け取るべきだという主張がされることがあります。どちらの計算が適切かは、婚姻費用の取り決めや、住んでいた期間なども含めて検討します。

オーバーローンの場合

家の価値よりローンの残高が多いオーバーローンの家は、財産分与の対象から外れることが多くあります。別居後の返済によって、離婚時にはオーバーローンでなくなっている場合でも、別居時の残高で計算すれば、分与の対象にはならないことになります。

計算が変わる事情

  • 家の価値をいつの時点で評価するか(離婚時の価格で評価するのが一般的)
  • 婚姻費用で、住居費の調整がされていたか
  • 別居後に、家に住んでいる側が固定資産税や修繕費を負担していたか
  • ローンの一部を、相手も負担していたか(連帯債務など)

実際の計算は事案によって変わるため、資料をもとに個別に検討します。

よくある質問

Q. 別居後のローンを、家に住む妻が払っている(名義は夫)

名義人でない側が払った分は、その人が取得すべきものとして、財産分与の中で考慮を求めることができます。返済の記録を残しておきましょう。

Q. 夫がローンを払わなくなった

ローンの名義人が払わないと、家が競売になるおそれがあります。早めに金融機関と相談し、婚姻費用の請求とあわせて対応を検討します。

Q. 別居時のローン残高の資料がない

金融機関から返済予定表や残高証明書を取り寄せることができます。名義人でない場合は、調停の中で提出を求めます。

まとめ

別居後に払った住宅ローンは、家の価値から別居時のローン残高を差し引いて計算する考え方が一般的で、別居後の返済で増えた家の価値の分は、払った人が取得するものとして、分与の対象に含めない整理になります。ただし、婚姻費用で住居費として調整されていた場合は、二重に考慮しないよう整理が必要です。

別居時のローン残高と、婚姻費用の取り決めを確認して、ご相談ください。

この記事の監修

弁護士 佐藤 都(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)

上智大学法学部、北海道大学法科大学院卒業。
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