監修:弁護士 和田 慈朗(埼玉弁護士会所属/大宮ありあけ法律事務所)
父が亡くなり、相続の手続きのために戸籍を取り寄せたら、知らなかった子がいた。父が再婚する前の結婚で生まれた子、あるいは、父が認知していた婚外子。会ったこともない相手ですが、法律上は自分たちと同じ相続人です。その人を抜きにして遺産分割をすることはできず、預金の解約や不動産の名義変更も進みません。この記事では、前妻の子や婚外子がいることがわかったときの、相続手続きの進め方と注意点を解説します。
こんな疑問はありませんか?
- 前妻の子や婚外子も、相続人になる?相続分は?
- その人を抜きにして遺産分割できない?
- どうやって連絡すればいい?
- 連絡が取れない、応じてくれない場合は?
この記事でわかること
- 前妻の子・認知された子は相続人で、相続分はほかの子と同じこと
- 相続人全員が参加しないと遺産分割が無効になること
- 連絡の取り方と、手紙に書くこと
- 連絡が取れない・応じない場合の手続き
前妻の子・婚外子も、同じ相続人
亡くなった方の子は、母が誰であっても、全員が相続人です。前の結婚で生まれた子も、結婚していない相手との間に生まれて認知した子も、今の家族の子と同じ順位・同じ相続分で相続します。
| 前妻の子 | 父の子なので相続人。前妻は相続人にならない |
|---|---|
| 認知した婚外子 | 父の戸籍に認知の記載があれば相続人。相続分は結婚している相手との子と同じ(かつて2分の1だった規定は2013年に改正) |
| 認知していない婚外子 | 法律上の子ではないので、相続人にはならない。父の死後3年以内に死後認知の訴えを起こされると、相続人になることがある |
| 養子 | 養子縁組をしていれば相続人 |
POINT 「会ったことがない」「父と交流がなかった」という事情は、相続分には影響しません。そして、その人を無視して手続きを進めることはできません。相続人全員の署名・押印がない遺産分割協議は無効で、銀行は預金の解約や払戻しに応じず、法務局も不動産の名義変更を受け付けません。「知らなかったことにして進める」ことはできない、という前提で動く必要があります。
相続手続きの流れ
| 1. 相続人を確定する | 父の出生から死亡までの戸籍をすべて取り寄せ、前婚の子や認知した子がいないかを確認する。戸籍が複数の市区町村にまたがることが多い |
|---|---|
| 2. 相手の住所を調べる | 戸籍の附票を取り寄せて、現在の住所を確認する |
| 3. 連絡する | 手紙で、父が亡くなったこと、相続人であること、遺産の内容、今後の進め方を伝える |
| 4. 遺産分割協議 | 相続人全員で分け方を話し合い、遺産分割協議書に全員が署名・押印する |
| 5. 名義変更・解約 | 協議書と戸籍などを使って、預金の解約、不動産の相続登記などを行う |
前妻の子・婚外子がいる相続のご相談をお受けしています
相手への連絡から遺産分割の協議・調停まで、弁護士が代わりに進めます。
連絡の取り方
突然の連絡になるので、相手の立場に配慮した丁寧な手紙が基本です。
- 父が亡くなったこと、連絡が遅れた事情(戸籍を調べてわかったことなど)を伝える
- 相手が相続人であること、遺産の概要を伝える
- 今後の進め方の希望(分け方の提案など)と、返事の期限を書く
- 必要に応じて、弁護士の名前で送る(第三者からの連絡のほうが落ち着いて受け止めてもらえることが多い)
最初の手紙で「印鑑を押してください」とだけ送ると、不信感を持たれて話がこじれることがあります。遺産の内容を隠さずに伝えることが、結果的に早い解決につながります。
POINT 感情の対立が起きやすい場面なので、慎重に進めてください。前妻の子や婚外子の側には、「父に捨てられた」「今の家族だけが大事にされてきた」という思いがあることも少なくありません。今の家族の側にも、「突然現れて遺産を求めてくるのか」という戸惑いがあります。お互いの感情がぶつかると、本来は数か月で終わる手続きが、何年もの争いになることがあります。最初の連絡の仕方と、相手の立場への配慮が、解決までの時間を大きく左右します。
直接のやりとりで感情的になりそうなときは、弁護士を間に入れることをおすすめします。
連絡が取れない・応じてくれない場合
| 手紙に返事がない | 時間をおいて再度送る。弁護士名で送ると返事が来ることも多い |
|---|---|
| 応じてくれない・話がまとまらない | 家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる。相手が調停に来なければ、審判で分け方が決まる |
| 住所がわからない・行方不明 | 不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人を相手に遺産分割を進める。長期間生死不明なら失踪宣告も検討 |
遺言がある場合
父が「全財産を今の家族に」という遺言を残していれば、遺言どおりに手続きを進められますが、前妻の子や婚外子には遺留分(法定相続分の2分の1)があり、遺留分侵害額を請求される可能性があります。請求されたら、金額の計算と支払いの方法を検討します。
→ 「遺留分を請求されたら|請求されたときの確認ポイントと対応」
よくある質問
Q. 前妻の子に、父の死亡を知らせなくてもよいですか?
知らせずに遺産分割を進めることはできません。相続人全員の参加がない遺産分割協議は無効で、預金の解約や不動産の名義変更もできません。
Q. 相手が「遺産のことは知らない。関わりたくない」と言っています。
その場合でも、遺産分割協議書への署名など、最低限の協力は必要です。書類を整える手間を弁護士が引き受けることで、相手の負担を減らせます。
Q. 前妻の子にも、父の借金は相続されますか?
相続人である以上、借金も相続分に応じて引き継ぎます。借金が多い場合は、相手も相続放棄を検討することになります。
まとめ
父に前妻の子や認知した婚外子がいた場合、その人も今の家族の子と同じ相続分の相続人です。その人を抜きにした遺産分割は無効で、預金の解約も名義変更もできません。戸籍の附票で住所を調べ、丁寧な手紙で連絡し、遺産分割協議への参加をお願いします。応じてもらえなければ遺産分割調停、行方不明なら不在者財産管理人の選任で進めます。
相手への連絡から協議まで、弁護士が代わりに進められます。お気軽にご相談ください。